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忘却線上の星
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1: 名無しさん@読者の声:2011/9/5(月) 01:09:18 ID:.gB2sDwzQY

自分を流れ星に例えた人が居た。光るのは一瞬だけ、あとは消えて忘れ去られるのがオチさって。あの人は明るく伝えてくれたけど内心は分からない。



女の子「星が綺麗です。」

謎の影「そうですね。」

女の子「私は忘れたくありません。だから、毎日夜空を見上げるのです。」

影「風邪を引く前に部屋に入りましょう。」

女の子「忘れるのは、哀しいです。」

影「そうですね。」

女の子「…冷たいです。」

影「今日は生憎の雨ですから。」

女の子「誰かが泣いているのですか。」

影「それは…─、」

────────



働く女とそれに付き従う男の話。生暖かい目でお付き合い下さいませ。


65: ◆Rfq4NUNFd6:2011/9/12(月) 00:56:57 ID:TYJ7JJGGPs
表現上の理由も有り、キャラクターに名前を付けたいと思います。


星川 美月(ホシカワ ミツキ)
以下:美月


椎名 陽人(シイナ ハルト)
以下:陽人


椎名 仁己(シイナ ヒトミ)
以下:父


椎名 春子(シイナ ハルコ)
以下:母

部下女
早乙女 彩月(サオトメ サツキ)
以下:彩月



宜しくお願い致しますг●
今日はお休みなさいませ。
66:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/12(月) 22:10:02 ID:IVsp/xntKY
数分後

陽人「美月さん、行きましょうか。」

美月「待たせたな。椎名、…これ変じゃ無いか…?」

ベージュの刺繍レースのブラウスに膝が隠れる程度の濃緑のタックスカート、何より黒髪を下ろした姿が新鮮で陽人は其れだけで満足だった。

陽人「髪、巻いたら良かったのに。」

美月「私にそんな技術有ると思ってるのか。」

陽人「さぁ、出発しましょう!車に乗って下さい。」

美月「おい。」



着なれたスーツは何より楽だと思っていたが、中々私服と言うのも気持ちが楽になる。女は自然と笑みを溢していた。


67:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/12(月) 22:33:13 ID:UHbjGnE77Q
陽人「さて、つきました。」

二人が赴いたのは有名なショッピングモール。デート初心者、には最適な場所である。



美月「私は此処に居るから後は任せた。」

陽人「そんな真顔で頼まれても、服ってのは見た目良くても着てからのシルエットが重要なんです。よって、本人が居なきゃ駄目。俺が、駄目。はいはい、後でオムライス屋さんに行きますから…!」

美月「誰がシェフの気紛れオムライスを食べたいなんて言った?…─変なの選んだら許さないからな。」

陽人「大丈夫です、…美月さんなら。」

陽人(着せたい服なら沢山ある、なんて言ったら変態扱いされるだろうか…。)

陽人は徐に携帯画面を一瞥する。取り敢えず失敗の無いよう、早乙女に相談をしていたのだ。その際色々問われたが、それは近所のケーキ屋のショートケーキと共に伝える、と言う事で決着がついた。

男「そうですね、…取り敢えず此処行きましょう。」

陽人は然り気無く、美月の手を取った。
68:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/16(金) 01:10:13 ID:yKROkiQYYg
美月「……っ!」

陽人「…駄目、でしたか。」

美月は自身の一瞬の動揺に耐え兼ね手を離してしまった。見上げれば大の男が眉を八の字にしている。

美月「…いきなり、は、…昨日の今日だしな、私も、…慣れない。」

微妙な隙間を空け美月は呟く。この年になって酷く滑稽な姿だと、自分を嘲笑してしまいたかった。

陽人「分かりました、…手を繋いで下さい。離れたら嫌なので。」

陽人の骨格がしっかりとした大きな手が差し出された。美月にだけ聞こえる声で、そっと。

ぎこちない手つきで、美月は其の指先を掴んだ。

陽人(少しずつ少しずつ…、一日0.5歩。よし。)



その後服選びは進み。美月の混乱を他所に、陽人は着々と自分色に染めて行くのだった。

69:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/17(土) 00:33:18 ID:eJTSDc8Acg
美月「………。」

陽人「オムライスを目の前に眉をしかめてどうしたんですか?」

美月「いや、美味しい。やはり玉子にチーズは合うな、味も私好みだ。」

美月(しかし…何かが足りない。)

陽人「俺の秋の風物詩オムライスも美味しいですよ。はい、あーん。」

美月(昔、仁己さ…お父さんにつれていって貰ったファミレスのオムライスより違和感がある、何故だ?)

陽人「美月さーん?」

美月「………ん。」



無意識に何の躊躇いも無く美月はオムライスを口へ運んだ。頭の中にはこの違和感を払拭する事しか無かったからである。

陽人(あれ、照れない。)

美月「和風も美味しいな、今度作ってみてくれ。」

美月(………!)

美月(こいつのオムライスを食べはじめてからか…!?)

陽人「勿論です!また、愛情たっぷりで俺頑張りますから。」

美月(愛情…。駄目だ、何だか顔が…、また動悸がっ…!)

陽人(今更照れてるのか…?)


70:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/17(土) 02:02:17 ID:YUVBSm0k6o
美月「服、ありがとう。」

陽人「次のデートはあれ着て下さいね。」

美月「……何時になるか分からないけどな。」

陽人「大丈夫です。俺の忍耐力は美月さんが一番知ってるハズですから。」

美月「なぁ、…椎名。」

陽人「はい?」

美月「…何で私は椎名を思い出せなかったんだ。」

陽人「俺が昔より男前になったからですかね。」

美月「…そうか。」

陽人(あれ、目からオレンジジュースが。)

美月「…私が落とした記憶はどれくらいあるんだろうな。思い出そうにも無いものは「人は忘れる生き物です。」

陽人「今、こうして傍に居れるだけで俺は幸せなので。美月さんは美月さんのままで居て下さい。」



陽人は押し留めている記憶を邂逅した。今が、幸せで有れば良いのだ、そう言い聞かせる。きっとあれを思い出せば彼女は、今以上に記憶に固執してしまうから。
71: 名無しさん@読者の声:2011/9/17(土) 07:46:00 ID:yboG2oVRjw
念のため言っておくが邂逅ってのは出会うってことなんだぜ?
つまり記憶「を」邂逅じゃなくて記憶「と」邂逅が正しい使いか支援支援
72:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/17(土) 12:31:25 ID:yKROkiQYYg
>>71
御指摘と支援ありがとうございます(´;ω;`)見て頂けている証なので感動しております。

また何か有りました、宜しくお願い致しますorz
73:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/17(土) 12:35:39 ID:BIGHQVtaBA
?「そこ、どいてくれるかな。」

?「──ちゃんに迷惑かかるからさ。」

陽人「嫌だ、…っ!」

?「困ったわねぇ…。」

?「言う事聞きなさい。」

小さな少年は背後に匿った少女を、その小さな背中で隠した。少女の意識は途切れ、彼にそれを助ける手立ては無かった。小さな世界にはただただ、全てが敵にしか見えなかった。


74:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/17(土) 19:05:46 ID:ZPUj/J6KUY
美月「椎名、…ありがとう。」

陽人「俺が好きでやってる事ですから。」

美月「…あの、だな。」

氷が溶け、小さな音を立てる。こんな風に簡単に、昔の確執や壁や偏見も、記憶も、溶けてしまえば良いのに。美月は眉間に皺を寄せ願う。

美月「勿論、いきなり結婚、なんて無いよな…?」

至極不安気な美月の表情が、陽人の視界を占領した。

思わず口元が弛む。

陽人「勿論です。…っは、…く、……ふ、…!」

美月「な、なんだ!?今の質問に笑う要素なんかあったか!?」

陽人「ゆっくりで、良いですから。俺ももっと美月さんの事知りたいです。」

美月「わ、分かった、変な質問して悪い。」

プレゼントされた服の入った袋を抱き締め美月は立ち上がった。
75:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/19(月) 20:36:18 ID:17t3Rt4P0A
陽人「そろそろ出ましょうか。先、外出てて下さい。」

美月「…御手洗い、行ってくる。アソコで待ち合わせしよう。」

陽人「分かりました。行ってらっしゃい」

陽人は目印のポスターを一瞥後清算へと向かい、美月は足早に御手洗いへ足を進めた。

陽人(美味しいケーキ屋は調査済み、家に帰ってからのまったりタイムも大丈夫かな。)

清算を終えポスターの近場に有る椅子に座る。未だ姿を現さない彼女を想い、女子のトイレ長い説を思い出した陽人だった。





美月「待たせたな。」
76:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/19(月) 20:53:21 ID:TYJ7JJGGPs
陽人「あ、え…それ、もしかして。」

美月「…気が、早かったか?」

美月は先程陽人が選んだコーディネートで現れたのだ。椅子から立ち上がるのも忘れまじまじと完成度の高さに見惚れる。

美月「やっぱり、変か。ごめん。」

陽人「いっ、いやいやいや!違います違います違います!似合ってます、流石俺!」

美月「私も、こう言うのは嫌いじゃない。…また服選び頼む。…近いうちにな。」

それと、と美月が紡いだ。鞄の中を探り古びた、星のキーホルダーを取り出す。

陽人「これ…。」

美月「流れ星じゃない、…星だ。小さな頃、仁己さんが渡してくれた。御守りみたいな物だ、…椎名が消えないように持ってろ。」

陽人「良いんですか、そんな大事なもの。」

美月「………っ!」

美月は周りを見渡す、勿論他人も利用する場所だ。この言葉を伝えるには、流石に視線が痛い。

美月「場所を変えるぞ!」

くるりと陽人に背を向け、美月は慣れぬ場所にも関わらず一歩踏み、行き場も決めず歩みを始めた。

陽人「美月さん……っ!ちょっと、待って下さい、あの、…っ!」
77:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 01:58:04 ID:rjF1TwFr3s
美月「何だ…?」

陽人「今日はデートです。」

美月「それがどうした。」

陽人「次の行き先は決めてあります、行きますか行きませんか。」

美月「…分かった、人気の少ない所で椎名と話せるなら其処に行く。」

陽人「とっておきの場所です。」

幾らか時間が経過した。陽は橙色から赤へ移り姿を消す準備に入る。
78:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 02:10:59 ID:K4FUVeqavI
美月「うちじゃないか。」

陽人「じじゃーん!」

美月「!!」

到着したのは実家、目の前に有るのは甘美な甘味。美月の視線が其れに釘付けになるのを陽人は見詰めた。

陽人「ココア入れますね、…ゆっくり話しましょう。」

美月「…何でだ、」

陽人「はい?」

美月「何で、私は、いけしゃあしゃあと、椎名に、仁美さんに、春子さんに…おんぶに抱っこ、してるんだろうな。」

陽人「それは…。」

美月「まだ、私は家族じゃないのに。」
79:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 02:26:58 ID:rjF1TwFr3s
陽人「美月さん。」

美月「ごめん、やっぱり直ぐに整理なんか付かないんだ。…ただこの年になって"聞き分けが良くなった"だけ。情けないだろ、こんな上司。」

陽人は息を止めた。ケトルの沸騰する音と心拍が同調する。

ドラマの様な言葉しか浮かばない、しかし今伝えなければ、意味が無い。もう恥など無かった。後は、彼女さえ受け取ってくれれば、どんな陳腐な台詞も救われるのではないだろうか。



陽人「俺が今話してるのは、星川美月です。上司でも他人でもなく、俺が一生ついていくって決めた、美月さんなんです。だから、自分を追い込まないで、下さい。ゆっくりで良いから、俺は知りたい。もっと美月さんを知りたい。」





流れ星は、切なかった。
気付かれない事を承知で光り、視界に入らない事を承知で流れる。彼女の願いを叶えられる可能性も僅かだった。たった、一瞬。

ただひたすらに現れては消え、現れては消え。そうして行くうちに、何時か覚えてくれるだろうかと。少年は未来に想い馳せた。

一番星になれば彼女に見付けて貰えるだろうか。
80:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 02:55:47 ID:K4FUVeqavI
美月「お前みたいな奴なら、私なんかより貰い手沢山居るだろうに。」

陽人「俺は美月さんじゃないと駄目なんです。」

美月「………ココア、早く。」

美月「…私も、椎名の傍に居る。」

慣れた手付きでココアを作る陽人の作業が停止する。当の本人は羞恥もあり陽人の方を見ては居なかった。

部屋にカカオの匂いが広がる。



陽人(この唐突なデレが美月さんの魅力とか言ったら殴られるだろうか。)
81:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 03:10:22 ID:K4FUVeqavI
美月「明日からまた仕事だと思うと、何か変な感じだな。」

陽人「そうですかね?あ…!もう、無理はさせませんからね。」

美月「優秀な部下のお陰で昔より楽させて貰ってるよ。」



その後は他愛の無い会話が紡がれた。まだまだ、距離は遠い。気を抜けばきっと消えてしまう、其れは互いに危惧していた。
82:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 03:12:16 ID:K4FUVeqavI

─────────

少年は走る、ひたすら走る。辺りは暗く、何時か見たお化けの本が頭を過る。もしも本からお化けが出たら自分は今度こそおしまいだ。

少女の身体は軽い。そして先程から動かない。暗闇は不安を助長する。少年は足を止め、その場に腰を降ろした。暗闇は不安を助長し、潤む視界で夜空は歪む。

隠れなければ見付かる、見付かれば僕らはどうなる?ヒーローなんか居ないヒーローなんか居ないヒーローなんか居ないヒーローなんか居ない。

少年は呪いのように呟いた。



足音が迫る。


83:
◆Rfq4NUNFd6:2011/9/23(金) 03:14:47 ID:rjF1TwFr3s
軌道修正しなきゃgdって参りました、読んで下さっているかたありがとうございます。

何かアドバイス、ご意見御座いましたら宜しくお願いします(´・ω・`)

何せギャグ要素取り入れにくいので伏線を張ることで楽しんで頂けたら幸いです…!お休みなさいませ。
84: 名無しさん@読者の声:2011/9/24(土) 01:34:06 ID:AyC0sCuso.
っC
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