初めてSSを書かせてもらいます。
一応江戸時代が舞台ですが、勉強不足なもので変なとこもあるかも。
そういうところは、SSだから!と広い心でスルーしてください。
幼稚な文で申し訳ないですが、そこもSSだから!とスルーしてください。
以上のことが大丈夫なイケメンであれば、最後までお付き合いください。
読みづらかったらごめんねっ!
393: 譲:2012/2/13(月) 15:15:37 ID:POlqxi9/V6
>>392
ありがとうございます!
そう言ってもらえるとうれしい限りです(*´ω`*)
今日もちょこちょこ投下していきますねー
394: 譲:2012/2/13(月) 15:20:25 ID:POlqxi9/V6
聡依が目を開けると、見知ったまぬけな顔が心配そうに覗き込んでいた。
それに思わず笑うと、途端に柔らかな手が飛んでくる。
「なっ、なんで笑うんですかっ!」
「いや、ごめん。面白かったから」
嬉しいやら腹立たしいやら。
暁は胸がいっぱいなのを感じながら、またしゃっくりを上げる。
そんな暁を聡依は優しく撫でた。
「聡依殿……っ」
「おはよう、暁」
目をうるうるさせた暁が、聡依に飛びつく。
それを受け止め、仕方ないなぁと呟く聡依も楽しそうに笑っていた。
騒ぎに起きてきた太助やろくろ首、お夏に囲まれ、聡依はご飯を食べていた。
一日寝ていたので何も食べておらず、空腹でしょうがなかったらしい。
最初に望んだのがそれか、とやや呆れたものの、皆が何となく嬉しそうである。
「私はどのくらい寝てたの?」
395: 譲:2012/2/13(月) 15:26:46 ID:POlqxi9/V6
「丸一日ほどだな」
「それだけ? なんだかもっと長かった気がするよ」
もぐもぐと口を動かす聡依に、太助は穏やかな顔をする。
頬についた傷が暁のやったことを表していた。
ろくろ首もそれを見て、何となく嬉しそうに笑みを浮かべる。
「それにしても、どんな夢を見ていたの?」
お夏が聡依の差し出した茶碗におかわりを盛りながら尋ねた。
一瞬、聡依はお妙を思い出したのか、少しだけ寂しそうな顔をする。
しかしそれはすぐに柔和な笑みに変わった。
「ちょっと懐かしい夢をね。よかったよ、久しぶりに会えて」
その言葉に何を想像したのか、太助は穏やかな顔で頷く。
他の面々は首をひねっているのだが、彼には聡依の夢が想像つくらしい。
396: 譲:2012/2/13(月) 15:31:03 ID:POlqxi9/V6
「それより、だね」
ちらりと聡依がそれに目をやる。
夢売りは聡依と一緒にごはんを食べていたのだ。
しかも負けじと4杯目。
しっかりしているというか、なんというか。
「お前、なんでそんなにご飯ばかり食べてるの? おいしい?」
聡依の問いに、みんなが肩透かしを食らう。
夢売りはそれにも答えず、ツンと済ました顔でご飯をかっ込んでいた。
「そっ、それより夢売り。賭けは私の勝ちだからね、約束は守ってもらうよ」
「ふんっ、そんな約束、した覚えはないけどね」
「お前ねっ……!」
ろくろ首が怒りに身を震わす。
それを何の気にもなしにご飯を食べながら眺めている聡依。
夢売りは何かを抱え、箸を置くと立ち上がった。
「お前、それはっ!」
397: 譲:2012/2/13(月) 15:32:38 ID:POlqxi9/V6
「私はこんな家、さっさと出ていくとするよ。せいぜい頑張るんだね」
ふん、と夢売りは鼻を鳴らし、無理だろうけど、と意地悪く笑う。
ろくろ首がそれに険しい顔をした時だった。
それは流れるような動きだった。
不意に動いた聡依はすっと立ち上がるとともに夢売りに近づき、その抱えていたものをすいっと抜き取る。
そして間髪入れずに、鞘を抜き捨て、その刃を夢売りの首筋に沿わせた。
「約束は守らなきゃだめだよ、ね?」
夢売りの喉が、ゴクリと鳴る。
398: 譲:2012/2/13(月) 15:37:57 ID:POlqxi9/V6
しかし、誰もが固唾を呑んで見つめるその場面を壊すのも、やっぱり聡依であった。
ふと、ちゃぶ台に目をやった彼は
「おっと、ご飯が」
彼はそう言い、倒れかけた茶碗を直す。
そして何事もなかったかのように再び座った。
しかし、その手には夢売りが大事そうに抱えていた物――春芳の短刀が握られていた。
それを見た皆が目を丸くする。
中でも一番驚いていたのは夢売りのようで、空になった自分の手と聡依の手にある刀をと何度も見比べていた。
「さて、その約束ってなんなのか話してもらおうか」
空になった茶碗を前に、満足したらしい。
聡依が夢売りにそう告げた。
399: 譲:2012/2/13(月) 15:43:05 ID:POlqxi9/V6
「あの子の場合は、私が開放するだけじゃ目を覚まさないよ」
夢売りは観念したのか、静かな声でそう告げた。
部屋には聡依と暁、そしてろくろ首が残った。3人は夢売りを囲んで座っている。
「どうして?」
「あの子は無理矢理寝かされたお前とは違う。自分から進んで私のところにお願いに来たんだ。だから、その分夢の束縛は強い。自分から起きようという意識もなければ、起きることはできないよ」
「じゃあどうすればいいんだい?」
次々と重ねられる質問に、夢売りはうんざりという顔で答えていった。
それを一通り聞いた聡依は顎に手を当て、ふむ、と考え込む。
なにか、策でもあるのっだろうか。
「つまり夢売りがおせんさんを夢から解放したうえで、誰かが彼女の夢に入り、説得しなければいけないってことか」
「それが得策だな」
400: 譲:2012/2/13(月) 15:45:33 ID:POlqxi9/V6
夢売りが頷く。
それを確認した聡依が、じゃあ早速やろう、と言い、なぜか手を出した。
「なにするんだい?」
「誰が行くのかじゃんけんで決めるのさ。簡単だろ」
「えっ、お前が行くんだろ?」
「あっしは聡依殿をまた夢の中に返すのは嫌ですっ!」
飛び交う意見に、困惑する聡依。
一度は面倒くさそうに頭を掻いたが、強行突破を決め込んだらしい。
もう一度手を出し、勝手に始める。
「はい、じゃーんけんっ」
「ちょっと! 私もやるのかいっ?」
401: 譲:2012/2/13(月) 15:46:50 ID:POlqxi9/V6
しぶしぶ手を出す暁とろくろ首。
慌てたのは夢売りで、なんで自分が、という顔をしている。
まったく当然の反応なのだが、聡依はそれに怪訝な顔で返した。
「なんでやらないのさ。お前は当事者じゃないか。ほらほら、いくよ」
聡依に押され、結局じゃんけんで行く人を二人選ぶことになった。
二人、というのはもしも一人が夢に囚われても、もう片方が連れ戻せるからだ。
二人ともダメになったら、その時はその時、ということだった。
なんというか聡依らしい作戦である。
402: 譲:2012/2/13(月) 15:50:37 ID:POlqxi9/V6
「これは……、言いだしっぺが負ける法則だね」
華麗に一人負けした聡依が呟く。
そんなアホなことを言っている聡依は無視され、残った3人がもう一度じゃんけんをした。
その結果、夢売りが負ける。
「じゃあ私と夢売りだね。自分の夢に囚われるほど、こいつもバカじゃないだろうから、これは安心」
むすっとした夢売りに聡依がにこやかに言った。
何というか、彼の言うことというのは一言も二言も多いのである。
「聡依殿、大丈夫ですか?」
403: 譲:2012/2/13(月) 15:51:10 ID:POlqxi9/V6
それに心配そうなのはやはり暁であった。
聡依はそんな彼を笑うと、頭を撫でてやる。
「大丈夫だって。さっきたくさん食べたからね、すぐにでも眠れるよ」
「そう意味じゃなくって……」
「それに、なにかあってもまた起こしてくれるだろう? 引っ掻いて」
聡依が赤くなった頬を指差す。
それを言われると何も言えなくなってしまい、暁はしぶしぶ黙って頷いた。
それを確認した聡依は、夢売りに頷いて見せる。
「そいじゃあ、始めようか」
404: 譲:2012/2/13(月) 15:52:43 ID:POlqxi9/V6
今日はここまで終わりです
またあした
ノシノシ
405: 譲:2012/2/14(火) 13:24:21 ID:POlqxi9/V6
今日もちょこちょこ投下していきますねー
406: 譲:2012/2/14(火) 13:26:57 ID:POlqxi9/V6
夢売りの行う夢からの解放は随分と格好のつけたものだった。
それは別に本人がそばにいなくてもできるらしい。
彼はおせんの家の方を向いて、すっと手を左から右に横に引た。
その瞬間、そこにいた面々は皆空気が変ったのを感じた。
そのあとはとても簡単のように見えるものだった。
目を閉じ、ふっと息を吐く。
それだけで、またその場の空気が色を変える。
「これで開放はされたよ。でも、目を覚ましてはいないだろう」
「うん。これからが本番だね」
振り向いた夢売りに聡依は頷く。
それに夢売りも頷き返した。
「じゃあそろそろ行きますか」
407: 譲:2012/2/14(火) 13:29:11 ID:POlqxi9/V6
夢売りは、今度は逆向きに手を引き、そしてそれを縦に伸ばすような動作をした。
すると、そこにあったのは見慣れた壁ではなく、あの長屋の一室だった。
「お前のやることは、なんだか格好がいいね」
妙なことに感心している聡依に呆れたのだろう。
夢売りは何も言い返さず、そこに足を踏み入れる。
聡依もそれを慌てて後を追った。
急に入ってきたイタチと男に、おせんは驚いたようだった。
それと同じくらい、聡依もその場を見て驚く。
そこはどう見ても日常生活だったからだ。
408: 譲:2012/2/14(火) 13:31:14 ID:POlqxi9/V6
おせんがいて、姉であるおりんがいて、そして父がいる。
そしてさらには……。
「おっかさんまでいるじゃないか」
おせんが何を夢売りに頼んだかが、少しわかったような気がした。
自分と大差のない夢だったわけか、と聡依は頷く。
「あなた、誰?」
警戒するようにおせん問うた。
おせん以外の人が動かないのは何か理由があるのだろうか。
聡依がそんなことを考えていると、夢売りに肘で突かれる。
「ボケッとしてないで、なんか答えろよ」
「あぁ、ごめん」
言われた通りおせんに向き合い、聡依はその場に座った。
おせんはますます警戒したのか、さっと距離を開ける。
それを見てた聡依は、ひどいなぁと苦笑いを漏らした。
409: 譲:2012/2/14(火) 13:32:58 ID:POlqxi9/V6
「ええと、私はその、君をここから連れ出しに来たんだよ」
「直球だな」
呆れ顔の夢売りは、おりんやその父、そして母を手刀で切って行く。
まるで幻でも見ていたかのように、それらの人々は空気のように歪み、景色の中に溶け込んで行った。
「夢を開放すると、夢は脆くなるんだ」
不思議そうに見ていた聡依に、そう説明する。
へぇ、と感心したように息を漏らす彼の前で、おせんは急に泣き出した。
「何をするのっ……」
聡依はとっさに夢売りを睨んだ。
睨まれた夢売りは困ったように目をそらす。
おせんが泣いたのは夢売りだけの所為ではない気もするのだが。
410: 譲:2012/2/14(火) 13:34:26 ID:POlqxi9/V6
「あの、さ。うんと、これは夢なんだよ。わかってるんでしょ? だから、あいつがああやったけど、別に君のお姉さんとか父上なんかは別にいなくなってないからさぁ」
泣く子はどうも苦手なようだ。
おろおろしながら、聡依が懸命におせんを慰める。
おせんはギュッと唇を噛みしめ、首を強く振った。
「夢だっていいもん。夢だっていいから、母さんに会えればそれでいいもん」
頑ななおせんに、弱った顔で夢売りを振り向く聡依。
夢売りは我関せず、という顔で肩をすくめた。
「あぁ、うん、そうなの? でもさぁ、現実にはお姉さんとか父上が待っているじゃないの? 心配しているよ?」
「だって、姉さんも父さんもどうせ私なんか置いていくじゃない。父さんは仕事しか考えていないし、姉さんだって奉公に行ってしまう」
411: 譲:2012/2/14(火) 13:35:57 ID:POlqxi9/V6
なるほど。
だからおりんが奉公に行くという話を聞いた途端、彼女は亡き母にすがったのか。
納得したように、聡依は一人頷く。
おりんは泣きじゃくりながら、言葉をつづけた。
「姉さんが奉公に行ったら、私は独りになっちゃうもん。母さんがいれば私は独りじゃないもん」
「ま、それは事実だよね」
弱った顔の聡依がそう言うと、おせんはますます泣き出した。
それを呆れた顔で見つめる夢売り。
どうもこの男に子供の世話というのは向かないのである。
「なんでそれを認めちゃうかねぇ」
「だって事実じゃないか」
むくれる聡依に、夢売りはますます呆れる。
放っておけなくなったのか、夢売りも聡依のそばに座り、おせんを見つめた。
412: 譲b:2012/2/14(火) 13:37:16 ID:POlqxi9/V6
「お前ね、このままだったら確実に死ぬよ」
おせんに吐かれた言葉に、息を呑む彼女。
その隣で聡依は苦い顔をする。
それも事実だが、それを言うのはどうも、という顔だ。
「お前は夢の中では生きられないんだ。バカだね、みんな言うんだよ。夢の中で生きられればどれだけいいだろうって。でもね、そんなことを実際にやる人はほんの少ししかいないよ。みんな、辛かろうが悲しかろうが、現実を見て生きてるんだよ」
おせんの目に涙がたまっていく。
心配そうにしながらも、聡依は夢売りを見守ることにした。
まぁ、泣き止まないおせんにお手上げだったというのも事実なのだが。
「みんなそれくらい強いんだ。お前の姉さんも父さんも、みんな一生懸命に生きてるよ。お前はそれから逃げるのか? あの二人はお前を心配しているんじゃないのか? お前だけ、この夢の中で何にも考えずにのほほんと生きて、そして最後はそのまま死ぬのか?」
「でっ、でも……」
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