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猫又「聡依殿っ」
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1: :2011/12/22(木) 21:41:43 ID:wu5lOnqMeM

初めてSSを書かせてもらいます。
一応江戸時代が舞台ですが、勉強不足なもので変なとこもあるかも。
そういうところは、SSだから!と広い心でスルーしてください。
幼稚な文で申し訳ないですが、そこもSSだから!とスルーしてください。
以上のことが大丈夫なイケメンであれば、最後までお付き合いください。

読みづらかったらごめんねっ!


609: :2012/3/12(月) 00:13:07 ID:5Ed33nzkrM

「それはそれは……」

困った話だ。猫たちは不安そうに、顔を見合わせていた。
聡依も無差別に消えていくという言葉を聞き、ようやく深刻に考え始めたらしい。眉をしかめ、妙だね、と呟く。

「帰って来た猫は、いないんだよね?」

二匹はそろって頷いた。聡依もそれに頷く。何とかしてやりたいが……、しかし今すぐできるものでもない。地面を見つめながら考え込む聡依。ふと彼は一つ息を吐くと、猫たちの方に目を戻した。

「悪いけれど、今すぐどうにかできることじゃない。それはわかるだろう? だけど、何か探ってみるよ」

猫たちはパッと顔を輝かせ、元気良く頷いた。それを見て、聡依もほっと息を吐く。

「あっ、でも……、あたしら、お前に何も返すことが出来ないにゃ」

三毛猫がしょぼんと耳を垂らした。聡依が報酬を受け取ることを知っているらしい。
そんな猫に、彼は楽しげに声を漏らして笑う。

610: :2012/3/12(月) 00:14:39 ID:5Ed33nzkrM

「何言ってるの。猫に報酬をせびるほど飢えちゃいないよ。もし飢えていたとしても、お前らに何かを貰うくらいなら、その辺で犬死することを選ぶね」

にやりと笑みを乗せると、猫たちは戸惑ったように顔を見合せた。
割と律儀なのだろうか、無報酬で何かをしてもらうと言うのはむず痒いらしい。
聡依はそんな彼らの頭を乱雑に撫でまわす。

「がたがた言ってないで、うんと言いなさい。猫なんてね、人を顎で使うくらいがいいんだよ」

随分極端な意見だが。しかし猫たちはその言葉で踏ん切りがついたらしい。確認するように互いに顔を見合わせ、頷きあうと、聡依の方に顔を戻した。

「じゃあ、頼むにゃ」

「贅沢なお願いだけど、なるべく早く。みんな怖がっているにゃ」

「了解っ。まぁ期待しないで待っててよ」

頼むよ、と口々に言う猫たちに、聡依はそう答えた。彼らはやや不安そうな顔をしながらも、ゆっくりと首を縦に振る。
それを見た聡依は、再び猫たちの頭を軽く撫で、ゆっくりと立ち上がった。

611: :2012/3/12(月) 00:15:41 ID:5Ed33nzkrM

「それにしても、猫を食べるねぇ……、あぁ、食べるはまだ確定で無いのか」

 猫たちと別れた聡依は、一人、そんなことを呟きながら歩く。
どこに向かうでもなく、なんとうなく歩きながら先ほどの話を考えていた。

「猫、猫、猫かぁ。猫なんぞ攫って何かいいことでもあるのだか」

ただ食費が嵩むだけじゃないか、と彼は憤慨する。しかし、妙な話だった。
裏山に寝付いているという何かが猫を攫っているとは。そんな話、聞いたこともない。

「傘貸しおばけの話なら、聞いたことがあるんだけどなぁ」

ふぅ、と息を吐き出した。まぁ、考えていても煮詰まるのみだ。
そこら中から、情報を集めなければ何にもできない。
そう考えた彼は、清次の貸本屋にでも行こうかと、足の向ける方を変えた。

612: :2012/3/12(月) 00:17:20 ID:5Ed33nzkrM

 と、その時だった。聡依は、何やら妙なものを目の端で捉えたような気がして、その足を止める。
その動く方に向かって目を動かすと、そのあとを猫が追っているのに気が付いた。

「まさか、ね」

口の端に苦笑いを浮かべ、ゆっくりとそちらを振り返る。何やら大きな猫じゃらしのようなものが、ふわふわと宙を漂っていた。
もちろん、皆に見えるものではない。妖の類か、はたまたそれが作り出した幻覚か。

「大正解、なら嬉しいけど。なんだか罠にかかった気分だなぁ」

こんなにすんなり、元凶を見つけてもいいものか。
あの猫じゃらしを追う猫たちのように、自分もまさかはめられているのでは?
胸の奥にある妙な違和感が引っかかり、追うのを躊躇う。

613: :2012/3/12(月) 00:18:12 ID:5Ed33nzkrM

「しかし、ここで追わぬとなると次お目かかれるのはいつになるかわからないしねぇ」

なるべく早く、と息を詰めていた猫を思い出す。聡依はじっとそれを見つめながら、困ったように頬を掻いた。

追うが正解か、追わぬが正解か。

暁なら、追うなと怒るだろう。浮かんだ猫の顔を掻き消し、聡依は一つ、自分に向かって頷いた。

「よし、悩んでもしようが無い。とりあえず追って見ますか」

深追いだけに気を付ければいい。何かあれば、すぐに逃げればいい話だ。
そう結論付け、彼はやや足を速め、それの後を追いかけた。

614: :2012/3/12(月) 00:19:58 ID:5Ed33nzkrM


 猫たちを追っていくと、やがて山に入って行った。鬱蒼としたそこは、雪がまだ残っており、滑りやすい。
何度か転びそうになり、そばの木に掴まる。そんなことを繰り返しているうちに、聡依の足取りも慎重なものになっていた。

「一体どこまで行くんだよ……」

チラリと空を見上げれば、もうすっかり茜色に染まってしまっている。帰るころには真っ暗になっているかもしれない。
引き返そうか、と聡依が足を止めた時だった。

「えっ? あっ、うわっ」

溶けかけた雪に足を滑らせ、転びかける。
必死でそばの木に手を伸ばしたが、掴んだのは細い枝だったらしい。パキっと乾いた音を立てると、頼りなく折れてしまった。
そのまま地面に尻餅をつくが、雪面では止まりそうにない。


615: :2012/3/12(月) 00:21:43 ID:5Ed33nzkrM

「うわぁあぁっ」

斜面を滑り落ちていく感覚に、胃の腑が冷えるような思いをした。
夢中で何かに掴まろうと手を伸ばすが、一向に止まる気配はない。
恐怖にギュッと目を瞑った瞬間、ふわっと体が、一瞬だけ浮いた。

「えっ?」

何やら軽い段差があったらしい。体が宙に投げ出され、すぐに地面に叩きつけられる。
背中に一瞬だけ痛みが走り、それがすぐに熱さにと変わった。

聡依は体の痛みに顔をしかめ、やや疲れたようにその場に延びる。
はぁ、と軽いため息を吐き、すっかり薄暗くなってしまった空を、気だるげに見上げた。

616: :2012/3/12(月) 00:22:23 ID:5Ed33nzkrM
今日はこの辺で終わりですノシノシ
617: :2012/3/12(月) 23:06:00 ID:Pb8nfFihjY
今日も投下していきますねー
618: :2012/3/12(月) 23:12:29 ID:woecc2OYmg

「憑き妖として、やらなければならないことはただ1つです」

静かな部屋の中で、さとりはそう一言、言い放った。1つ、と言葉を声には出さずになぞる。

さとりは軽く息を吐くと、再びその口を開いた。

「それはもちろん、結び人を支えること。言葉にすると一言ですが、実際には違います。それは、わかりますよね?」

それに暁は頷いた。どの行動も、聡依を支えることに結び付く。

しかし、それは以来に関することであったり、彼の個人的なことであったりもする。

……彼自身のことについては、ほとんど触れることができていないのが現状だが。
619: :2012/3/12(月) 23:19:04 ID:Pb8nfFihjY


「だけどまぁ、それを私たちが言うのは無理な話です。彼らにはそれぞれ、必要なものが違います。だから、あなたは彼のために一体何が出来るのか、何をするのが一番いいのか。それだけを考えてください。」

さとりは柔らかに笑って見せた。やや嘲りを含んだそれに、暁は眉をひそめて身構える。

嫌みを言われるだろう。そう予想したが、さとりが紡いだ言葉はそれと反していた。

「もっとも、そんなこと、私が言えることではないのですが」

自嘲だったのか、と浅い息が漏れる。
さとりはふと、先ほど見せた自嘲をその表面から消し去り、優しげな表情を浮かべる。しかし、あの重たい嘲りは彼のどこかに仕舞われているのだろう。暁はそれに顔を歪めた。
620: :2012/3/12(月) 23:22:30 ID:Pb8nfFihjY


「憑き妖がしなければならないことは、人によって言うことが違います。ただ、忠実に結び人の言うことを聞けばいい、という人。彼らの内面までをも支える必要があるという人。それ以外にも多々います。恐らく憑き妖の数だけ、その答えは違うでしょう」

暁はその言葉に頷いた。

「私にもまだわかりません。私はずっと、主の命令に従っていれさえいいと思っていましたから」
621: :2012/3/12(月) 23:28:44 ID:woecc2OYmg

さとりは言葉を切り、また目を伏せた。座卓の角をじっと見つめ、それからふと暁に目を戻す。暁も、目をそらさなかった。

「しかし、こうして長年憑き妖と話をしていると、1つだけ分かったような気がするのです。それは、あなたがどんな時でも彼の味方でいてあげることです」

「味方?」

さとりはゆっくりと頷いた。

「長く一緒にいれば、きっとわかると思いますが、この世の中は彼らの味方ばかりではありません。今は寧ろ、敵の方が多いのでしょうね。そんな中で、どんな時も揺るぎない味方がいればいいと、私は思うのです。そうすれば、彼らはきっと安心して自分のやりたいようにやれる。そんな存在が、憑き妖なのではないかと私は思ったのですよ」


622: :2012/3/12(月) 23:32:21 ID:woecc2OYmg

彼は少しだけ、寂しげに微笑んだ。暁は何か言おうと口を開き、結局何も言わずに口を閉じる。

何を言えばいいのか、わからなかった。

そんな彼の心がわかるのだろうか。さとりはそれに触れることなく、再び口を開いた。

「さて、最後の1つをお話ししましょうか。これが、今日私がここに来た、一番の理由です」

最後の1つ、それは憑き妖でいる覚悟。暁は迷うことなく、頷いた。
623: :2012/3/12(月) 23:37:13 ID:Pb8nfFihjY


「もちろん、覚悟はできています。」

そんな彼に向かって、さとりはゆっくりと頭を振った。それを見た暁は、一瞬言葉を失い、それからムッと口を尖らせる。
自分の覚悟を、無下にされたような気分になったのだ。

「1つ、話を聞いてください。それから、もう少しだけ、考えていただきたい。あなたがなおざりな気持ちで、憑き妖でいるとは思っていません。ただ、1つだけ。もう少しだけ」

諭すように言われ、暁はしぶしぶ頷いた。別段、反対される風でもない上に、1つだけならいいか、と。

さとりはやや、強張った顔で笑みを浮かべると、深く息を吐き出した。

「恥ずかしい話を、させていただきましょうか」

それは、彼と彼の主の話だった。
624: :2012/3/12(月) 23:41:58 ID:woecc2OYmg

「死にたいのか?」

何かの気配で目を開けた。

いつのまにか眠っていたらしい。とりあえず起き上がろうと体を動かすと、背中と腰に思い痛みが走る。

「こんなところで、何で寝てる?」

痛みに顔をしかめながら、なんとか声の方を向く。見たこともない少女が、傍らにしゃがみこみ、こちらをじっと見つめていた。

長い黒髪が地面についてしまっているが、気にならないらしい。彼女は一心にこちらを見つめる。

「え?」

思わず間抜けな声が漏れた。聡衣はうまく回らない頭をなんとか回し、ようやくこの状況を理解する。
625: :2012/3/12(月) 23:45:47 ID:woecc2OYmg


「そうか、足を滑らせて……」

ここで体を打ち、うんざりと目を瞑ったところまでは覚えていた。
だからと言って、寝るか? さすがの聡衣も、自分の神経を疑う。
この季節、彼女の言う通り、下手をすれば死んでいたかもしれない。

「おい。無視するな」

少女が聡依の手を引き、聡強く言った。彼はやや鬱陶しそうな顔をそちらに向け、乱雑に手を払う。

「お前、何もの?」
626: :2012/3/12(月) 23:46:42 ID:woecc2OYmg
今日はここで終わりです
また明日ー
ノシノシ
627: :2012/3/14(水) 01:04:17 ID:Z.rFMziDCI
今日もとんとんと投下していきますねー
628: :2012/3/14(水) 01:05:53 ID:6HFVrt4Uww

若干不機嫌な声で聡依が尋ねた。冷たいその物言いに、少女はぎゅっと眉をひそめ、再び聡依の手を掴む。

「童。見ればわかるだろ」

絶対只の童ではないだろ。呆れながら頷き、聡依は彼女に話の続きを促した。

「それで、何?」

「何? じゃない。僕がお前を助けてあげたんだ。僕がお前を起こさなかったら、お前死んでたんだからな」

聡依はそばの木に掴まり、軽く息を吐く。体を起こしているだけで、全身に鈍痛が走り、辛いかった。

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