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ターミナルの神様/epilogue
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1: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/25(水) 16:15:39 ID:aLkl3hdfUg
・この作品は「ターミナルの神様」の番外短編集です。

・ものすごく多大なネタバレを含んでいますので、本編を読まれていない方はご注意ください。

・本編同様作者はsage進行ですが、レスの上げ下げはご自由にどうぞ。

・蛇足です。ていうか補足です。無理して読む必要はありませんから、閲覧は自己責任でお願いします。

・蛇足です。


149: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/30(月) 19:56:26 ID:wKwNii9EEI
「僕はもう、いいんだよ」

生きている君が幸せになってくれたら、それで。

僕が笑うと、加奈ちゃんはまだ何か言いたげにしていた。

分かっていた。

だからこそ僕は言わせなかった。

「……行かなくていいのかい」

僕はわざとらしく加奈ちゃんを促す。

加奈ちゃんは恨めしそうに僕を睨むと、それでも素直にじゃあ、と会釈をして墓に向かって行った。

一方的にエゴを押し付ける僕を許してほしい。

バスが来るのを待ちながら、僕は小さく自嘲混じりの懺悔をした。
150: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/30(月) 19:56:52 ID:wKwNii9EEI
今更変わることは、僕にはもう難しい。

過去を懐かしんで振り返ることしか、僕はできそうにない。

だからこそ、君に望みを託したんだ。

君がいつか救われたら、そのときが僕の終止符になるだろう。






番外編6:ピリオド
151: 80:2012/1/30(月) 20:30:45 ID:6aJeFT4DVQ
亀レスすみません。
あ、と…部活等でしたら違うかもですね。
自分の師とは小説サイトで知り合いましたし。
すみません。

謝罪の意を込めて
つC
つ午後〇紅茶(ミルクティー)
152: 120:2012/1/31(火) 01:51:02 ID:LzDSOngupQ
>>120です。
何気なく彰さんの現在が知りたいと言っただけだったのですが、まさかこんな理想的な形で番外編にしていただけるとは…ありがとうございます(*^-^*)

お礼にこれを…
つC
153: 名無しさん@読者の声:2012/1/31(火) 05:47:36 ID:LDvZZ1bmmI
彰さんリクエスト答えて頂きありがとうございます!
彰さん…ウオオン(´;ω;`)
ひととせさんのこね書き方好きですわ

加奈ちゃんは結局どうしたんだろう…
154: 名無しさん@読者の声:2012/1/31(火) 10:16:49 ID:rGeVyfef4c
なんというか、人が死ぬってのは
やっぱり寂しいものがありますね。

色々考えさせて貰いましたよ。

お礼に
つC
つリプ○ン(ミルクティー)
155: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:36:40 ID:99nh8st8DU
>>151
文章で特定されたらどうしようかと思っていましたw
ご丁寧にありがとうございます、どうかお気になさらないでくださいね。
支援と午後ティーご馳走様でした(´∀`*)

>>152
気に入って頂けたならよかったです(*´ω`*)
支援ありがとうございました!

>>153
書き方好いてくださってありがとうございます(*・∀・)誉めて頂くとすごく嬉しいものですね。
加奈については、今日の更新分で今から投下していきますね。

>>154
寂しいけれど、当たり前の普通のことだと思っています。
読んで、考えて頂けることはとても有難いです。ありがとうございます。
皆さんの差し入れでほかほかなんですが、結さん宛てだったら申し訳ないなあと今気付きました……wど、どうしよう



今日の話で、番外編は終了とさせて頂きます。
大変お待たせしました、>>21さんリクエストの、加奈と憩のその後です。
本編の数年後、加奈中心の物語になります。
では、参りましょう。
156: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:38:43 ID:o7726pFAMk
つむじがふたつある人は、頑固者なのだと言う。

私がそのことを教えると、彼はそんなことがある訳ないと拗ねていた。

それを見て、やっぱり頑固者だ、なんて。

記憶の中で永遠になった彼は、今も優しい匂いをさせて笑う。

どうなっても良いなんて嘘だ。

約束なんて守らなくて良かった。

ただ、傍に居てくれたら、それだけで良かった。

それなのに彼を、縛って縋って繋ぎ留めて、傷つけていたのは私の方だ。

ごめんね、憩。

もうその言葉が、届くことはないけれど。






番外編7:ターミナルの向こう
157: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:39:14 ID:o7726pFAMk
そんなことを思い出したのは、壮絶な痛みに耐えた後だからだろうか。

分娩室の中を慌ただしく人が行き来して、その騒音に頭がぼうっとする。

途切れがちの思考で、思い出すのは憩のこと。

彼との子供を残すことはできなかった。

あれから何年も経つというのに、まだ精神は不安定のままで。

私はこんなにも脆くて頼りない。

それでも私は、今日、母親になった。
158: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:39:43 ID:o7726pFAMk
「お疲れ様」

彼が濡れタオルを持った手を持ち上げて歩み寄る。

労るように額を拭われて、汗が滲んだままの肌にようやく気付いた。

「赤ちゃん、は」

「もうすぐ会わせてくれるって」

「そう……」

それを聞いて私は、少しだけ頬を緩める。

結婚したのは優しい人だった。

憩を忘れられずに癇癪を起こす私を、受け入れてくれた人だった。

彼に抱くのは、執着のない穏やかな感情。

この人となら生きて行けると思ったのは、事実で。
159: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:40:16 ID:o7726pFAMk
「これからは君のこと、ママ、って呼ぶべきなのかな」

からかうように笑う彼に、私もつられて笑いながら答える。

「いらないよ、まだ」

「いや、呼んでれば喋るかもよ」

「じゃああなたは、パパ?」

「うん」

くすくすと笑い合う幸せは、けれど純粋なものではなくて。

喜びから醒める度、思うのだ。

私が幸せになっていいのか、と。

執着して独占して全て奪っておいて、憩が死んだら捨てて自分だけ前に進むなんて。

死んだら終わり、どんなに嫌がっていたとしても、結局私だってその通りじゃないか。
160: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:40:47 ID:o7726pFAMk
寂しさを彼が埋め、一時的に満たされる。

我に返れば罪悪感と自己嫌悪、また癇癪を起こしてしまう。

そんな私を抱き締める彼に、安堵してしまう自分が嫌で、嫌で。

断ち切れない無限ループ。

いつになったら終わるんだろう、先が、見えないままにここまで来てしまって。

「……加奈、見てごらん」

飲み込まれそうになった私を、彼の声が引き戻す。

はっとして見上げると、彼がそっと指を差した。

「男の子ですよ」

助産師さんが告げる。

その手には、真白の布に包まれた赤ん坊が抱かれていた。
161: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:42:16 ID:ogjb0kC5Sw
慎重に、助産師さんから包みを受け取る。

生まれたばかりの命は、本当に小さい。

小さくて、でも、きちんと相応の重みがあった。

「可愛いね、こいつ」

パパだよ、なんて言いながら彼がおどけてみせる。

赤ん坊はまだ赤いくしゃくしゃの顔で、目を閉じたまま、何かを掴もうと手をのばした。

人間なんだ、こんなに小さくても。

私はただ赤ん坊を見つめる。

こんなに情けなくて駄目な自分にも、人の母親になることができたんだ。
162: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:42:41 ID:2ho66zkJlw
「この子、もう髪の毛生えてる」

彼が楽しそうに赤ん坊に手をのばした。

壊れないようにそっと指先で、その柔らかそうな顔に触れる。

「そういう子いますよ、ほら、後ろの方も」

失礼しますね、と言って助産師さんが布を少しだけずらす。

恐る恐る角度を変えて抱え直すと、見えなかった赤ん坊の頭頂部が見えた。

「――……、っ」

私は思わず息を呑んだ。

まだほわほわとして少ない髪の毛が、ぐるりと渦巻いた中に、つむじがふたつ。
163: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:43:19 ID:2ho66zkJlw
ここにいたんだ。

「……加奈?」

彼が不審そうに顔を覗き込む。

私は俯いたまま何かを言おうとして、けれど言葉の代わりに零れ落ちたのは涙だった。

「ここに、いたの」

震える声で、やっとのことでそれだけを言う。

記憶の中の面影も、声も、薄れていつか消えてしまうと思っていた。

でも、信じて良いのだろうか。

愛しい人の名残は、確かにこの腕の中に。

彼が私ごと赤ん坊を抱き締める。

柔らかな温もりに、ようやく家族になれるような気がした。
164: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/31(火) 16:43:51 ID:2ho66zkJlw
「約束、守ってくれたね」

頬に伝うものはそのままに、精一杯の笑顔をつくる。

宙に彷徨う小さな手に、指先で触れると熱かった。

彼の力が、ふいに強くなる。

私は泣き笑いのままで、彼に頭を預ける。

触れた小さな手のひらは、しっかりと私の指先を握っていた。






番外編7:ターミナルの向こう おわり。
165: 名無しさん@読者の声:2012/1/31(火) 21:16:27 ID:UsgMXmcxGk
巡り巡って、また出会う。憩くんの魂の欠片は、加奈ちゃんが宿した小さな命に受け継がれたんですね。最後の最後に、それを願っていた私の心も救われました。

素敵な物語をありがとうございました(´;ω;`)
166: 21:2012/1/31(火) 22:57:31 ID:AwAldihhsU
>>21です。
いやもう何と言っていいのか…ありがとうございます!!
感無量です!

憩くん、今度はどうか長生きして、お母さんのそばにいてあげてください…。

素晴らしい物語をありがとうございました。
167: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/2/1(水) 17:03:28 ID:VwxIAK9LCQ
>>165
こちらこそ、素敵な感想をありがとうございました。
納得がいく終わりになっていたら、幸いです。

>>166
大変遅くなってしまってごめんなさい。
赤ちゃんが完全に憩じゃないことは、多分加奈も分かっているだろうけど、きっと今度はよぼよぼのお爺ちゃんになるまで生きてくれると思います。
こちらこそ、読んでくださってありがとうございました(´∀`*)



ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました!
これで本当の本当に終わりです。
蛇足だし、正直最初は削除依頼にしようと思ってたんですが、やっぱり保管庫でも良いでしょうか。
意外と色んな人が見てくださって、消すのが惜しくなってしまって……w
168: 名無しさん@読者の声:2012/2/1(水) 19:10:37 ID:abfFXIg/oE
加奈ちゃんと同じ名前の物体ですこんにちは

今日やっと全て読ませていただきました

胸が締め付けられるってこういうことを言うんですね

体の水分が亡くなりましたどうしてくれるんですか
なんでこんなに切ないんですか
なんでこんなに愛おしいんですか
なんでこんなに、素敵な話を書いちゃうんですか

私の記憶に一生張り付けてやります
ずっとずっと
死んで誰かの魂の一部に溶け込んだってこの話に巡り会いにくるんだから


消すだなんて勿体無い恐れ多い



書いてくれてありがとう
169: 名無しさん@読者の声:2012/2/2(木) 00:54:53 ID:Kkh511QEhI
ターミナルの神様読めてよかったです
大好きだこの作品
お疲れ様でした (*´ω`)っ旦
170: 名無しさん@読者の声:2012/2/2(木) 09:53:14 ID:fUOS.dk1OY
泣けるな、コレ
CCCC
171: 名無しさん@読者の声:2012/2/2(木) 15:44:40 ID:bchkG597sg
素晴らしい作品でした。
本当にありがとうございました
読むたび涙が滲みます(´;∩;`)
ひととせさんの文章を読んでいたら自分も久しぶりに創作意欲を掻き立てられました!!(笑)
この作品に会えて良かったです。
172: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/2/2(木) 19:22:13 ID:wPFCMzneoQ
>>168
本当に読みに来てくださったんですね(´ω`*)
あなたの言葉に、私もとても幸せな気持ちになりました。
伝えてくれて、ありがとうございます。

>>169
私も読んで頂けてよかったです。
ありがとうございました。

>>170
支援ありがとうございました(*゚ω゚)
泣いて貰えたならよかったです。

>>171
ありがとうございました。
そんな風に思って頂けて、すごく嬉しいです。
お互い良い作品を作っていきましょうね(´∀`*)



では、このスレは保管庫に入れて貰えるようお願いに行ってきますね。
素敵な読者さん方に恵まれて、すごく幸せな作品になったと思います。
読んでくださって、ありがとうございました。
173: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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