とある森。
光を浴びた小さな草むら。
花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。
静かな森に二つの羽音が広がった。
121: 1 お久しぶりです:2012/8/7(火) 18:22:57 ID:Vuxtltmhiw
進む道は洞窟で
進んだ先には落とし穴
穴は大きな正方形
それは確かに明らかに、
人が作ったとわかる金属の正方形
幅はとても広いけれど、深さは少年の腰くらい
そのまま進んでも支障など無い程度の穴でした
122: 1:2012/8/7(火) 18:27:30 ID:oEVCzzWWHs
しかしだけれど少年は
森にあるはずの無い、その無機質な光沢に少しの違和感と気味の悪さを感じました
何故でしょう?
洞窟のごつごつとしたいびつな岩の天井の中
その落とし穴の上だけが
きらりと平らな金属の天井だったせいかもしれません
123: 1:2012/8/7(火) 18:37:58 ID:Vuxtltmhiw
少年は少し考えます
一歩、落とし穴に近づこうと足を前に出しました
その時に、ちょうど足元の小石を蹴ってしまったのでしょう
小石がころころ転がって
穴の中へと消えました
そして聞こえた
かつん、堅いもの同士のぶつかる音
同時にかしゃん、金属の床がほんの少し上下して
するとするとどうでしょう
穴の上の天井までも、軽く上下したのです!
124: 1:2012/8/7(火) 18:41:17 ID:oEVCzzWWHs
そういうことか、
合点のいった少年は踵を返すと
先程まで少年がいた浮き島三つの水溜まり
そのほとりまで戻ってきました
そして水溜まりに浮かんだ三つのうち、少年に一番近い所にある浮き島の
ふやけた足を掴んでざぶり、陸地へと引き上げました
125: 1:2012/8/7(火) 18:45:41 ID:oEVCzzWWHs
そしてそのままずるずるずるり、
それの両足首をつかんで引きずります
ふやけた足首はやけに細く
硬い体はやけに重い
少年にそれを担ぐ力はありません
だからそのままずるりずるずる、
堅く冷たい落とし穴へ、
硬く冷たい男の子を引きずり進みます
126: 1:2012/8/7(火) 18:51:25 ID:oEVCzzWWHs
洞窟の中、
落とし穴まで戻ってきました
少年は一つ息を吐きます
引きずって来た男の子を一瞥し、
そして穴へと押し出しました
ぼとり、力無いそれは穴の中に落ちました
がしゃん、と金属の床が沈みました
それと同時に分厚い天井が落ちて来ます
今度は途中で止まらずに、天井は穴へと沈むのです
127: 1:2012/8/7(火) 18:53:27 ID:Vuxtltmhiw
ぐちゃり、
柔らかいものが潰れる不快な音が
静かな静かな洞窟に
何度も何度も反響しました
128: 1:2012/8/7(火) 19:02:48 ID:oEVCzzWWHs
穴に落とした男の子
彼は一体どうなったのか
そんなこと、想像せずともわかります
掴んだ足は、石の様に硬かったのに――
落とし穴は落ちて来た天井にふさがれて、ただの平らな道に変わりました
少年は金属の道を進みます
歩くたびに足元から伝わるぐちゃ、ごり、ぐちゅり、
そんな音など少年には聞こえていないかのように、進みます
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