2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
チーム:ハリュー【出会い】
[8] -25 -50 

1: 名無しですが何か?:2012/3/4(日) 10:56:44 ID:1lvOPQUkic
お題【出会い】

下記の順番でお願いします。

◆WfagbE5V86
ゆこ ◆Ryuko..Wy.
繭 ◆TFyL7CT/Mk
龍 ◆RYU....FU.
すに ◆cjb8xYwtrY

>>1-10 >>11-20 >>21-30 >>31-40 >>41-50


11: すに ◆cjb8xYwtrY:2012/3/6(火) 01:24:48 ID:TcGwlw8SdI
気付いたときにはもう遅く、彼女は人混みの中へと消え去ってしまっていた。俺は彼女から目を離したことを後悔した。

クソッ…!一時の感情で諦めるなんて、なんで俺はいつも逃げてばかりなんだ…!

彼女が出来ないのだって、赤い糸が見えるせいじゃない。本当は、運命の人じゃないからと最初から諦めていた俺のせいだ。

俺は今までの自分を深く後悔した。


暫くして後悔の波が引いたとき、突然激しい吐き気に襲われた。咄嗟に線路に身を乗り出して、ホームにそれをさらけ出してしまうのを防ぐ。

「大丈夫ですか?」

近くに居た若い女性が背中をさすってくれた。違う。君じゃないんだ。俺が捜しているのは君じゃない。

周囲の騒々しさが邪魔をしてか、俺はなかなか回復しなかった。声が出せない。けれどそれでも手で大丈夫と合図をすると、その女性はまだ少し心配そうな顔をして去っていった。

ネットのニュースなどで多少噂は聞いていたが、ここまでとは…。人身事故の現場を直視してしまった俺は、ただただ恐怖におののいていた。横たわっているとはいっても、死体はほとんどバラバラになっていたからだ。線路の隅に落ちていたカバンと、ボロボロになったスーツから咄嗟にサラリーマンと判断したにすぎない。運良く左手は形が残っており、先の考えに至ったのだった。

正直あの女性を捜すどころではない。このまま出社しても仕事も手に着かないだろう。俺は冷たくなった手で会社へと電話を掛けた。
12: 名無しですが何か?:2012/3/6(火) 11:59:23 ID:HTBgGj87.M
数回コールがなった後たまたま上司がいたとの事で上司に繋いでもらった。

上司「もしもし」

俺「あ…俺、です…」

上司「なんだ、君か!どうした?テンション低いぞ?」

俺「すいません…今日休ませてもらいます…」

上司「は!?なんだいきなり」

俺「すいません、埋め合わせは必ずするんで。本当にすいません」

上司「いやだからちょっとま(ブツッ)

勝手にこっちから切ってしまった。会社にいったらこってり絞られるだろう。どうでもいいが保留音がなぜア○パンマンなんだ。

携帯をぱたんと閉じたら駅員に話しかけられ、別室へつれて行かれた。
主に体調について聞かれたので大丈夫を連呼してだしてもらい、家へ帰るホームに行き一本分休み電車に乗った。

見えない赤い糸、口が悪い女性、阿部さん、死体、ラーメン屋、とこの前から色々あったな…と考えていたら疲れてきた。眠い。どうせ終点が最寄りだし、一眠りしよう…と考え気づいたら眠りに入っていた。



13: ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/6(火) 13:52:47 ID:1lvOPQUkic
気がつくと俺はラーメン屋の前にいた。

(あぁ、さっき見つけたラーメン屋か...ちょっと食って行くか)

昼どきだというのに客はまばらだ。仕方ないか、駅にほど近いとはいえ大きな駅でもない。
それに今日は平日だしな。
カウンター真ん中あたりの席に通され、味噌ラーメンを注文する。
カウンター右端には作業着を着た青年、左端には長めの髪をひとつに結わえた若い女性が座っている。
ラーメンを食べるときにさらっと髪をひとつにする女性の仕草にそそられるのは俺だけだろうか?
そんなどうでもいいことを考えながら麺の湯を切る店員の手元を眺めていた。

この人にも糸がないんだな...
今まで糸があるのが当たり前だと思っていたから、糸がない人がいても脳内で補完していたのかもしれない。
そうだよな、糸がない人だっているに違いないんだ、だって。。。

右隣の男が話しかけてきた。
青年「糸がないんですよ。やはり同性同士では結ばれないものなんですかね」

えっ

返事をする間もなく左隣の女性が口をひらく。
女性「糸がないからってわたしがあなたの運命の相手だとでも思いました?」

えっ

右見て左見てもう一度右を見て、それぞれが最近見た顔だと思い至ったとき、店員がラーメンを運んできた。
店員「死んだら...糸ってなくなっちゃうんですかねぇ?相手に出会うことなく死ぬ人間には糸はないんですかねぇ?」

びっくりして顔をあげると、店員だと思っていたソレはボロボロのスーツをまとった肉の塊となっていた。
唯一左手だけが、ソレが元は人間だったのだと示す。

青年「同性だからって運命ってあってもいいと思わないか」
肉塊「私には、家内いたんですよ。今の家内の手に糸はあると思いますか。。」
女性「ねぇ。私死んじゃうの?だから糸ないの?靴の裏みたいな人と運命って言われるよりいいのかな」


やめてくれ。。俺だってわからないんだ、もう、もう勘弁してくれ。
俺「やめろぉぉぉぉおおおおおおおお」


自分の声に驚いて顔を上げると、そこは電車の中で。
誰もいない車内で目の前に駅員と思われる人物が驚いた顔で俺を見下ろしていた。
駅員「終点、ですよ。。。?」

14: 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/6(火) 17:39:45 ID:P2/yVcR/xs


俺「あ、ああ……すいませんでした。起こして下さってありがとうございます」

駅員「いえ、気を付けてお帰り下さい」


頭を下げて駅員に礼を言うと、柔らかく笑顔で返してくれた。
夢であった、ということだろうか。
いまいち判断がつかず、胸にモヤモヤとしたものが浮かんでいるままだった。

駅を出るまで悶々と不思議な夢の内容に首を傾げていると、スッと長髪の女性が通って行った。
間違いない、彼女だ。奇遇なのか何なのか、良く見かけるような気がする。それよりも、言ってしまう前に今度こそ…!

慌てて走って追いかけ、彼女の左手を自分の左手で掴んだ。
思わず掴んだ左手にはやはり糸がなかった。しかし、彼女の手はしっかりと触れることが出来た。

俺「はぁ…っ、は……よ、良かった…」

死んでない、幽霊とかじゃないんだ。
安堵の溜息を吐き、荒くなった息を整える。

しかし、幽霊でないのなら何故彼女の手には……。

彼女「…何かと思えば、また貴方ですか? 性懲りもなく人の前に現れるなんて…」

俺「ど、どうしても聞きたくて…」

彼女「貴方に聞きたいことがあろうが、私にはないんですよストーカー」

俺「スト……ああ、もう!何でそっち方向に持っていくかな!?」

彼女「普通、それ以外に考えられないじゃないですか?それともドMなんですか?この変態野───ッ!?」

相変わらず油断していたら蹴られそうな視線を浴びつつ、呆れたように口を開いた彼女はまた俺を罵ろうとしたらしいが、ある一点を見つめて彼女が固まってしまった。

一体、どうしたの言うのだろうか。

彼女「……糸が……ない…」

俺「……え?」


彼女は、俺の左手の小指を真っ直ぐに見つめていた。

15: 龍 ◆RYU....FU.:2012/3/6(火) 18:32:01 ID:1lvOPQUkic
俺「え…ま、まさか!他人の赤い糸が見えますかッ!?」

誰にも秘密を言った事はなかったのに、驚きよりも仲間意識に近い嬉しさが込み上げて咄嗟に聞いてしまった。

彼女「え?あ……。え?」
俺「俺も他人の赤い糸が見えるんですよ!でも貴女の糸が見えなくて、どうしても聞きたくて!」

実際、赤い糸が見えるなんて言うつもりはなかったし何を聞こうとしてたのか自分でもわかっていなかった。
衝動的に追いかけて手を掴んでしまったとは言えなかった……。

彼女「そんな…まさか貴男も……。見える人が他にもいたなんて。」
彼女「だったらそう言ってくれればいいじゃないですか」

俺(言えるはずがないだろう。第一最初からストーカー扱いしたくせに……。)
俺「あ、申し訳ないです。まさか貴女も糸が見えるとは想像もしてなかったのですが、話したい事があるんです!」

糸が見えない人を見つけて動揺していたが、ホームでの事故の事。もし、もし仮説が正しかったら……。
彼女に不安を与えるだけかもしれないが、どうしても話さなくてはならない。

俺「色々と話したい事があるんですが、少しだけお時間を頂けないですか?」
彼女「……。……。そうね。私も初めて糸が見える人、そして糸が見えない人と出会ったし少しなら。」
俺「あまり人に聞かれてもあれなので、移動しませんか?」

そう言うと彼女も不安な顔は隠せないが承諾してくれた。
糸が見えなかった経験。ホームでの出来事。仮説。関係ないと思い込みたい夢のこと。
すべて…すべて話さなければ。

そして二人で場所を変えようと歩き始めると……。
腐った肉塊のような匂いが鼻をつき、背後から『フシュー。フシュー。』と聞こえてきた。
夢がよぎる。胸がドキンドキンと痛みを覚えるくらいに鳴り出す。

恐る…恐る…後ろを振り向くと……

そこには何もいない。
しかしまた腐った肉塊の匂いと『フシュ』と音がなる。

俺(はッ!!!こ、これは!!!!!!)







俺がすかしっ屁をした匂いと音だった……。


 俺「      」
    くせぇ…。
彼女「      」
16: すに ◆cjb8xYwtrY:2012/3/6(火) 23:39:41 ID:BwUAYK.Plk
最悪だ…。初めから良い出会いではなかったが、これは無い。会ったばかりの女性の前ですかしっ屁をしてしまうとは…。これでは俺が『臭い変態』として彼女の記憶に刻まれてしまう。しかも先程、胃の中身を戻してしまっていたから、余計に今の俺は臭い。

バレていなと信じ、俺は何度も深呼吸をした。


しかし…困った。何から話せば良いのだろう。
そう思っていると彼女から話し掛けられた。

彼女「あなたは、いつから見えるんですか?」

俺「えっ、俺ですか?」

情けない。俺以外に誰に話し掛けると言うんだ。馬鹿じゃないか。

俺「俺は物心ついた頃には既に」

彼女「…そう」

俺「あなたは?」

彼女「私は10年前に事故に遭ってから。初めは幻覚でも見ているのかと思いました」

驚いた。どうやらこれは、先天性と後天性とあるものらしい。

彼女「当時付き合っていた彼が居たんです。けれど彼と私の小指は結ばれていなくて、そのせいで私が勝手にブルーになって、そのまま別れてしまいました」

憂いを帯びる彼女の声は、なんだか色っぽかった。
17: ◆WfagbE5V86:2012/3/7(水) 00:53:55 ID:i7etF7UDUg
とっても好きだったのだろう。あったばかりの俺にさえ彼女の"愛しい"という感情がひしひしと伝わってくる。

彼女「変ですよね…あんなに好きだったのに糸が繋がってなかっただけで一気にさあっと冷めちゃって。
彼に詳しい理由も言わないまま一方的に別れるって言って別れちゃいました」

大事なもの、もらったのに…と呟きながら彼女は左手の小指を擦りながら苦笑した。

彼女「あは、初対面の人になにいってんだろう…馬鹿みたい、私」

俺は先ほどとは違いシリアスな儚い雰囲気を醸し出している彼女に戸惑いつつも励まそうと声をかけようとした。

なんとなく、なんとなくだけど彼女を悲しませちゃいけない気がしたのだ。
もっと悲しむ事があるようで。

俺「…でも君は!

彼女「しかもこんなすかしっ屁野郎に」

………」

前言撤回。
彼女はただの毒舌女だった。
俺は自分が悪いのに内心んだよちくしょーとキレていたら彼女の擦っている左手の小指の付け根に隙間をあけて存在する二つの線らしきものを見つけた。

線…というか繋ぎ目…?
少し内側にへこんでいる何かと何かを繋ぎ合わせたような…。

ふと、俺は立ち止まってしまった。
さっき彼女はなんて言っていた?彼氏に?大事なものをもらった?彼女には十年前に事故に合い赤い糸がない。そしてあの左手も…。

ドクドクと心臓が早鐘を打つのが聞こえる。
振り返りきょとんとしている彼女に俺は唾を飲み込み、きいた。

俺「あの、その彼氏さん今は?」

彼女「? 数年前から連絡が取れていませんが…」



18: ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/7(水) 11:14:40 ID:r38l2DxFBw
俺はない頭をフル回転させて仮説に仮説を重ねていった。
それに集中しすぎて、「話が話だからカラオケのような密室のほうが落ち着けるんですけどねー。またオナラされたら困るんで」などという戯れ言も聞こえないことにできたわけだが。
 
彼女に連れられるままに喫茶店へ行き、コーヒーを頼む。
俺「貴女は…嘘をついていますね?」
彼女「えっ?」
 
小指の繋ぎ目…なんらかの理由、たとえば件の事故で相手の男性の指を貰ったのかと考えた。
しかし、そもそもそんな偶然があるだろうか?事故で指を損失したとして、健康な指を移植することはありえない。
二人が同時に事故にあい、かつ二人ともが小指を切断していない限り。
それでも、拒否反応があるだろう。適合するなんてどこまで偶然が重なればいいんだ?
 
彼女「なんのことでしょうか?」
俺「彼と別れた理由ですよ」
 
ミルクをたっぷり注いだコーヒーをグルグルとスプーンでかき混ぜ続ける彼女。そこに彼女の心境が投影されているのだろうか。
思わず取っ手を持ちカップを支える彼女の左手を見つめてしまう。
 
彼女「彼と糸が繋がっていなかったのは本当です。でも好きだった…。そんなことで別れるつもりはなかったんです」
コーヒーを混ぜる速度を落としながら顔を上げた彼女は、俺の視線に気づいたようだった。
 
彼女「あぁ…これですか。この傷は皮膚移植の跡です。事故のとき手袋をしていました。そこに引火して…」
彼女「指輪って金属だからすごい高熱になるんですよね。手ぜんぶ火傷しましたけど、この部分だけは手の施しようがなくて」
 
確かによくよく見れば手が指先を中心に他の肌の色とは違うような。。注意深く見るか、言われるかするまで気づかない程度のものではあるが。
彼女「放っておいたら壊死してしまうので。でもそんなことより、指輪を切ってしまったのが辛かった」
彼女「彼のお母様の形見だったんです。小柄な方だったので私は小指にしかはまりませんでしたけど。」
 
彼女はどこか遠くを見つめながら口元を硬く結んだ。言うか言うまいか悩むように。
 
彼女「あの指輪のサイズを直して、結婚指輪にしようねって……」
 
やはり、彼女は嘘をついていた。自分にも彼氏にも。優しい嘘を。
きっと母親の形見を失くしてしまったことへの罪悪感と、彼の指に糸がないことへの悲しみとが、彼と自分自身へ嘘をつかせたのだろう。
冷めてしまったなんて。。。
 
 
俺「自分を責めてはダメです。事故にあったのも見えるようになったのも、貴女の責任ではないですから」
彼女「優しいんですね。見た目によらず」
俺「。。。」
やっぱり少しくらい自責の念にかられてしまえばいい。でもその目が今までより少し柔らかくなった気がした。
 
 
 
俺「さて、いろいろ話したいことがあるんです」
返事の代わりだろう、彼女はスプーンをソーサーへ置いた。
 
19: 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/7(水) 16:32:05 ID:PqFQMjIQ5.


俺「…貴女にも、俺の指の糸は見えないんですよね?」

彼女「ええ。どうして糸がないのかと驚いたんですが……多分、貴方も見えるからですね」

俺「…そうかも知れません」

彼女の目を見れず、少し俯いたまま静かに喋る。
俺が妙に落ち着いて…というよりも、暗い雰囲気になってしまっているからか彼女は片眉を上げつつも冷静に応答をしてくれる。
目を伏せて、暫く興味が薄い様子で俺の話を聞いていたようだが、やがて口を開く。
口元にあったカップを下ろして、彼女は俺にしっかりと向き直る。

彼女「貴方は元から糸が見えていたなら、これまで当たり前であったことを…そんなに不安に思うことも無いと思います」

俺「今までずっと悩んでいたから。自分に糸が結ばれていないのを。でも、そんなことは誰かに話しても分かってもらえる話でもない」

苦笑気味にそう言うと、彼女は黙り込んでしまった。
俺と彼女は境遇が違う。辛い過去に重なる様ににおかしなことが起こってしまったようなもの…彼女にとってはそれが当たり前になっているはずだ。
置かれているカップの中を見つめると、自分の顔が確かに映っていた。

俺「実は少し前に、死人の指にも糸がないのを見て、混乱したんです。だから糸がない貴女も、ましてや俺もそうなんじゃないかって…」

彼女「……勝手に人を殺さないで下さい」

素直にすいませんと謝れば、珍しくきょとんとした彼女は別に良いですよ、というシンプルな返事をくれた。

俺「でも、そうじゃなくて…良い偶然が重なったことかなって」

俺は顔をあげて彼女を見つめる。

俺「だからこれは、運命の出会」

彼女「調子に乗るな」

さっきまでソーサーに置かれていただろうスプーンは彼女の手の中にあって、更に俺に向けられている。何だろう、この感じ。物凄く冷や汗が流れる。

彼女「言っておきますが、私にとったらここまでの貴方は変態害虫野郎!それがようやく顔見知りになった程度だったんです、勘違いも甚だしい…」

…いきなり手をつかんだりお巡りさんと呼ばれそうになったり(いや実際に呼んでた、来なかったけど)色々あったが、少し前に出会って今初めてこんなに真面目に話した。彼女のいうことは、もっともだった。
しかし、彼女はスプーンを下ろしてから緩く首を振った。

彼女「…でも。私も貴方も、こうして会話をしたことでお互いのことを少し知りました。ですから、これで赤い糸が見える仲間です」

そう言って俺に向けて初めて柔らかく微笑んでくれた。


20: 龍 ◆RYU....FU.:2012/3/8(木) 07:39:38 ID:1lvOPQUkic
毒舌な彼女だが、初めて見た微笑みにドキッとしてしまった。
動揺を悟られないように隠そうと口元を触ったり周りを見渡したふりをしたりしてしまった。

彼女に見とれてる場合ではない。
さて、どうするか。

不安を煽るわけではないが、万が一仮説が正しければ彼女の身にこれから何かあるかもしれない。
かといって、確証もないし今後どうすればいいかわからない。

考えてる沈黙の空気に耐えきれず、

俺「ごめん、トイレに行ってくるね。」

彼女「いっといれ。」






…。




ふむ。…ふむ。





トイレでようをたしてる間に今後どうするか、彼女になんて言えばいいか考えよう。
そして、トイレに行くと壁に一枚の写真が貼ってあった。














http://llike-2ch.sakura.ne.jp/ss/images/photo.jpg

俺「なんだこれ……。」
21: すに ◆cjb8xYwtrY:2012/3/9(金) 06:05:33 ID:39sqobllec
イタズラかはたまた店員のお茶目な自己紹介か。どちらだろうが正直どうでも良かった。俺が探しているのは『赤いシャー』ではなく『赤い糸』なのだから。だいたい赤いのはシャーではなくザグだ!けしからん!とかつてガンザムオタクであった俺の魂が叫んだ。
その左下にあった相合い傘紛いのものは特に興味もなかったのでスルーした。残念だが俺はノンケなのだよ。

「おかえりなさい」

彼女は穏やかな微笑みで迎えてくれる。初対面で感じなかった優しい視線がそこにはあった。

「ところで肝心の要件についてまだ伺っていないような気がしますけど」

「それは…」

俺は意を決して喋り始めた。

「あなたはどう思いますか?俺達が、俺達の運命が、誰とも繋がっていないことについて」

彼女はカップに手を添えたまま少し俯いて、それから窓の外を見つめる。何かを思い出しながら聞いているのだろうか。彼女の目は外の景色を見ているようで、何もみてなどいないように見えた。

「何故自分の小指には何もないのかとか、もしかしたら運命の人なんて存在しないんじゃないかとか…それに!!!

『一人死ぬ運命にあるんじゃないか』とか、そんな…ことです」

周りに聞こえない精一杯大きな声で、今まで彼女に言わなくてはと半ば使命感で思っていたことを告げた。

彼女は相変わらず窓の外を見つめていて、その視線の先にある突然降り出してきた雨が俺達の心を余計にぐちゃぐちゃしたものにしてしまうような気がした。
暫く黙っていた彼女がゆっくりと喋りだした。

「私、こんなものが見えるようになりましたけど信じたいんです。好きって気持ちが運命を作っていくんだって。好きな気持ちさえあれば死んだ人とだって繋がっていられるんだって」

「死んだ人…と?」

まさか、先天性の俺でさえ見たことがないものを、見え始めて10年そこらの彼女が見えたというのだろうか。

「見えるようになって一年経った頃、父方の祖父が亡くなりました。そのお葬式で見たんです。祖母と棺の中の祖父が結ばれているのを」

彼女の話はあまりに衝撃だった。確かに俺は恵まれているのか、身内の不幸というものに遭遇したことがない。両親兄弟共に今でもピンピンしているし、両祖父母は俺が生まれる以前に亡くなっていた。今まで出会ってきた人が亡くなることも奇跡的に無かったのだ。そのせいでこの年になっても法事に行ったことがない。

「…なんというか、吃驚仰天」
22: 名無しですが何か?:2012/3/9(金) 09:09:15 ID:dQogQk0cu.



私「でしょう?」

あの日の事を思いだしながら私は苦笑しつつも彼の目をみた。黒く輝いている瞳からは驚愕の色がみてとれる。薄々思っていたが彼は子供っぽいのかも知れない。両方の意味で。

私「出棺って言うんでしたっけ?それの前に祖母が冷たくなっている祖父の手をとりました」
私「祖父の左手を両手で包む祖母の左手から、確かに赤い糸がのびていました。」

二人の白い手に赤い糸がよく映えていたのを覚えてる。その後も二人の赤い糸は繋がっていた。結局祖父が火葬されて指そのものがなくなるまで繋がっていた。
私「ですから、私は信じたい。たとえ住む世界が違っても、運命の二人はずっと繋がっている、と」

彼「………」

まあ運命なんてコロコロ変わりますがね…なんて小声で付け加える。コーヒーを飲みながら彼をちらっとみる。まだ納得がいかないようだ。仕方がない、とどめだ。

私「それに、赤い糸がないなら作ればいいじゃないすか。私は確かに別れましたが今でもあの人を愛していますよ」

そう。赤い糸も様々な状況に応じて変わるもんだ。ないなら作ればいい。それだけ。

私はメモをちぎった紙に連絡先を書いてお代と共にテーブルにおく。

私「これ、連絡先です。非常識な時間じゃなきゃ多分いつでもでれるんで」

彼「は、……え?」

私「それじゃ」

彼「ちょ…ちょっと待って下さいよ!」

待たない。すたすたと歩きながら私は再び思い出した。これは彼には言ってないが、私が住む世界が違っても繋がってると信じたい理由はもう2つ。

は祖父との糸がきれた祖母は左手を右手で包みながら優しく微笑んでいた時、祖父と繋がっていた糸が小指の付け根のとこで優しくリボン結びになった。祖母は見えていないはずのそれを優しく撫でていた。
それが第一の理由。

第二は、そのリボン結びになった糸がほどけて葬式にきていた女癖、金癖、私生活のみっつがだらしがないと評判の叔父さんと繋がったことだ。

私はぎりっと奥歯を噛み締めた。

なにがなんでも祖母をあの男の犠牲にはしない。
絶対に!

私に恐怖を植え付けたあの男には!!!






23: ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/9(金) 23:37:33 ID:1lvOPQUkic
ベッドに横になってちぎられたメモを眺める。
喫茶店からの帰り道にコンビニで弁当を買って自宅に戻った。
気がつけば夕方で、昼飯を食べそびれていたのだが、精神的なものなのか疲れからくるものなのか食欲はまったくなかった。

090から始まる11桁の数字の羅列を眺めながら、それでも意識は全く別のところにあった。
(いろいろあった1日だったな。。。)

昨夜の夢から始まった長い1日を思い返す。
(彼女は...まだなにか隠している)
それが何かはさっぱり見当がつかないが、第六感というやつだろうか、妙な胸騒ぎがする。

赤い糸が見える仲間に出会って、この一種の能力についての考えを共有した。彼女とのやりとりを思い返してみても、自分の悩みの原点は解決されていなかった。
むしろ闇の奥深くへ入り込んでしまったような、、もう昨日までの自分には戻れない、知らない街に置き去りにされた捨て犬みたいな感覚。


なぜ自分の糸が見えないのか。
...相手に出会うことなく死を迎えるから。または能力者だから。

なぜ糸がない人間がいるのか。
...相手に出会うことなく死を迎えるから。言わないだけで実は能力者だから?いやそれは確率的にないだろう。
...相手が、既に亡くなっているから、、か。だが。

死んだら糸は消滅するのか。
...彼女は消滅しないと言った。それは肉体が消滅しても?肉体がなければ能力者の俺にだって糸を確認する術はない。
そうか、彼女の話に納得しきれなかったのはココだ。彼女の祖父が荼毘に伏されたあとまでは聞かされていない。
彼女の祖母の糸はその後どうなったのだろう?


そして......


そう、もうひとつ。彼女はまだ逃げている。現実から。

赤い糸がないなら作ればいい。そう言った彼女の表情を思い出す。彼を愛していると言った彼女の瞳は何を見ていた?
数年前から連絡がとれていない彼を、なぜ探さない?

だめだ。わからないことばかりだ。彼女から全てを聞きたい。彼女の抱える苦しみを知りたい。
知ってどうする?自分に何ができる?


ただひとつだけ言えることがある。俺は今日、彼女に救われた。糸がないなら作ればいい。そんな簡単な一言に、俺は一筋の光を見たんだ。

彼女の力になりたいと思うのに、それだけの理由があれば十分じゃないか?


左手で目の前に掲げていたメモの11桁の数字が、やっと視界に入った。これが電話番号だと、やっと本当の意味で認識できた。


俺「まだ迷惑な時間とは言わない。。よなw」


24: 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/10(土) 15:11:09 ID:RlHSxMP/3U

恐らく彼女も起きているだろう、子供ではないのだし……そんな考えの元、貰った番号と違わぬように身長に携帯に打ち込む。
しかし、会っているのに電話は何故か緊張してしまう。とりあえず落ち着こうと深呼吸をして携帯を見つめる。

「…よし」

通話ボタンを押し、耳に当てれば自然と機械的な接続音が響いた。…暫くしても、接続音が続いている。おかしいな、とは思いながらも待っていると、短い音と共に違う音が耳に入ってきた。

「─…ピーッという発信音のあとに、お名前と用件を──」

「留守電?」

一度電話を切り、ディスプレイに表示される時間を見る。案外早寝なのだろうか、と悩んでいたがすぐ携帯に着信がきた。

「…もしもし?」

「あ、良かった…繋がらないから寝ちゃったのかと」

「…何だ、貴方だったんですか。サイレントにしてたから気づかなかったんですよ」

そうだったのか、と安堵の溜め息を漏らす。彼女に眠くないかと訊ねたが馬鹿にしているのか貴様、と一蹴されたのでそれ以上は触れないことにする。

「で、どうかされたんですか?」

「あ…うん、何と言うかその……ええと」

「…歯切れが悪い。ハッキリ言って下さい」

相談に乗りたい相手に促されるとは情けないが、こんな話をズバズバというような奴はデリカシーに欠けているような気がするわけで…。
でも彼女のイライラを溜めるわけにもいかない。いや、イライラはしてないのかも知れないが待たせるのは悪い。それは違いない。

「……何か、力になれたらって」

「? ありがとう、今は特に困ってませ」

「や、そっちじゃなくて! 君がまだ話すに値しないと思っていたら別だけど…」

俺の言葉で沈黙が訪れてしまう。何か地雷を踏んだのか、まずいことを言ってしまったのか、また馬鹿だとか言われるのか。何にしても不安を煽られる。

「…貴方もなかなか面倒くさい人間ですね、人のこと言えたものでもないですが」

「嫌だったら」

「──私がまだ好きな別れた彼。私と糸が繋がってなかった…ってお話しましたね」

「あ、うん…聞いたよ」

「もし私が、彼と糸が繋がっている女性が二人で幸せそうに歩いてるとこを見てしまったとしたら……どう思うかなんて分かりますよね」


25: 龍 ◆RYU....FU.:2012/3/10(土) 16:03:00 ID:1lvOPQUkic



喫茶店で叔父さんの事を思い出してから私はイライラしていた。
私の記憶に刻み込まれた恐怖の"あの事"が頭から離れず優しい言葉を言う余裕がなくなっていた。

彼「…あ、ごめっ…でも…」

私「しつこいわね!貴男には言ってなかったけど、祖父が亡くなった後に祖母は違う男と赤い糸が繋がったわ!
  だから貴男もその内赤い糸が繋がる人が出来るわよ!これで満足した?もう私の事は放っておいて!」

感情が高ぶり祖母の糸が違う人と繋がった事を言ってしまった。
でもこれで彼はもう付きまとわないでくれるだろう……。

彼「それはっ!」

私「運命の人が見つかるといいわね。じゃ」と切ろうとした瞬間、

彼「ま、待ってくれ!それはおかしいだろう!?」

彼が何を言っているのかわからず、不意に耳を傾けた。

彼「赤い糸が違う人に変わるなら、貴女は何故好きな人と別れたんだ?
  自分に繋がるまで一緒にいればよかったのではないですか?
  第一、今まで見た中でみんなが繋がっていた。それは会った事さえない遠い人と繋がってる人もいる。
  糸がころころ変わってしまうなんて、それは"運命の糸"じゃなくなるだろう?」

たしかに言われてみると、糸が見えなかったのも彼だけで初めての経験だったし、糸が変わるなんて祖母以外見た事なかった。
好きな人が私以外の女性と繋がって幸せそうに歩いている所を見て思考を止めてしまったのかもしれない。

彼「祖母は現在も生きているのですか?」

私「え、ええ。」

彼「何か……。言葉には表せられないが、何かがある気がする!」

私「……。」

彼「もしよければ二人で様子を見に行きませんか?」

私は戸惑っていた。
祖母に会いに行くという事は、叔父にも会うかもしれない。
彼には"あの事"も秘密にしている。
しかし彼の言っている事に矛盾が感じられなかった。
何故なら自分も糸が変わる事なんて祖母しか見た事なかったからだ。




26: すに ◆cjb8xYwtrY:2012/3/11(日) 10:09:01 ID:8uVvYmpqnQ
「さぶっ」

俺は彼女との待ち合わせ場所である最寄り駅に来ていた。少し早く来過ぎたな。3月の風は寒がりな俺にはちときつい。それなのに手袋を忘れてしまって、ポケットから手が出せないでいた。マフラーも鼻まで隠して巻いているのにどうにも寒さが身に染みる。耳当てがあるのに鼻当てが無いとはどういうことだ。
どうしようもない疑問を抱きながら暫く待っていると、彼女がキョロキョロと辺りを見回しながらこちらに近付いて来た。

手を挙げて彼女に見つかり易くする。

「もう来てたんですか、早いですね」

早いですね、じゃない。待ち合わせ時間は5分前だぞ!しかしそんなことを言うのもみみっちい男だと思われそうなのでやめた。代わりに極小スマイルで返答した。

「じゃあ行きましょうか。案内お願いしますね」

「言われずともそうします」

…いちいち鼻につく女だ。落ち着けよ俺。いちいち気にしていたらストレスで死んじまう。良いな、気にするな。

「ふぅ」

自分に決意をさせた俺は一度深呼吸をした。深呼吸は良いねえ。深呼吸は便利だよー。さっきムカついてたことなんてどうでも良くなるんだからさあ。凄いよなあ深呼吸って。

なんてどうでもいいことをダラダラと考えていると、乗る電車が到着した。

彼女は黙って乗る。電車に乗り隣同士の席に座ったものの、俺たちの間で会話はない。まあ流石に電車の中じゃあ同乗者全員に話しているようなものだ。ここで話して良い話でもない。

ブーッ…ブーッ…ブーッ…

突然俺の携帯が鳴った。確認してみると、隣にいる彼女からのメールだった。メールアドレスを聞いていなかったので、さっき電車を待っている間に交換したのだ。

件名:今日のこと
本文:電車の中では聞かれてはまずいのでメールにします。

件名:Re:今日のこと
本文:それでしたらチャットとかどうですか?ここの部屋1で待ってます。
http://chat.jp/

送信してすぐ行くと彼女もまもなく来た。人数制限をしているので、外に流出する恐れも無いだろう。

『この方がロスタイムが出にくいですね』
『でしょう。提案して良かったです』
『今日行くところですが、父方の祖母の家です。非常に厄介なことに母方の叔父=昨日電話で少し出た人が何故か一緒に住んでいます。非常に胸糞が悪いです。正直行きたくはありません』

おいおい引き返すなんて言わないでおくれよ。
27: ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/11(日) 20:28:29 ID:1lvOPQUkic
俺『叔父さん、苦手なんですか?』
彼女『苦手?はっきり言って殺したいくらい憎んでいます。』

俺はなんて言っていいかわからなくて車窓から見える景色に心の安定を求めた。でも夜の車窓は戸惑った自分自身を映すばかりで。。。

俺『なぜ?』

送信ボタンを押してから少し後悔した。踏み込みすぎただろうか?でも、なぜか答えてもらえるような気がした。ネットにはそんな不思議な力があると思う。

彼女『話せば長くなります。祖父はいわゆる成功者でした。一代で財を成して私も何不自由なく育てられた。
彼女『母は詳しくは聞かせてもらえませんでしたが養女だと聞いています。幼少のころは随分苦労したようです。
彼女『養子を迎えたからといって母の実家が裕福だったわけではなく、父と出会って結婚した後は、母方の祖父母は何度も母に金の無心をしたようです。

携帯のキーを一心不乱に押し続ける彼女と、更新ボタンを押す度に綴られる彼女の家庭の事情。俺は口を挟むことはできなかった。

予想以上に複雑な家系を思い浮かべていた。
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/ss/images/kakeizu.jpg

彼女『母は、養女だったからなのか、それとも精神的な何かがあるのかわかりませんが、実家に・・・特に私の叔父、母の義理の弟には頭があがらなかった。
彼女『母の実家からの両親への金の無心はほとんどが叔父絡みでした。起業するからとか、事業に失敗したからとか。』

俺『そんなに何度も?お父さんは断らなかった?』
彼女『1回1回が大金ですから、、我が家もかなり逼迫しましたね。そこが理解できないのです。父は母の実家から連絡があるたびに、いくらだ、と。それだけしか。。。』

それぞれの家庭にはそれぞれの事情があって、それぞれ考え方は違うだろう。
だが家計が逼迫するほどの大金をなにも言わず用意するとなると、何かあるはずだ。彼女に伝えていない両親の秘密が。

俺『事故について詳しく聞かせてもらえますか?糸が見えるようになったヒントがあるかもしれない』

「ヒントなんて...」と言いながら、つと顔をあげた彼女は、やはり車窓を一瞥して、深い溜め息をついた。戸惑う自分の表情を見せつけられると、どうしようもなく無力に思えるものだ。

彼女『まぁ、ありきたりな交通事故です。父の運転する車に母と私が乗っていた。旅行帰りでした。突然父が旅に出ようなんて言い出して。
彼女『その帰り道に、横から突然出てきたトラックに追突されて。父も母も即死でした。私はシートベルトのおかげで無事だった。ひしゃげた車体から脱出するのに手間取って。。。』

手袋の上から左手を撫でる彼女。俺はその左手と、手袋の下にあるだろう痛々しい移植の痕を見つめることしかできない。
なんて無力なんだろうか。意識的に窓のほうへ顔を向けることはしなかった。これ以上、自分の不甲斐なさを思い知りたくない。

パタン...と携帯をとじる音がした。

彼女「車から出て、見つけたんです。あの男を。叔父は事故の様子を陰からずっと見ていたんです」

駅のホームに入っていく電車。明るいホームのおかげで窓に自分の表情を見つけることができなかった。それに少なからず安心した。
そしてそれは彼女も同じ気持ちだったかもしれない。先程とは違う、何か意を決したような瞳で立ち上がった。
彼女「つきましたよ」

__________

彼女の祖母の家は、財を成したと言うだけのことはある大きな。。本当に立派な家だった。庶民の生活しか知らない俺には表現する術がないのだけど。
インターホン越しに彼女とおばあさんが挨拶をし、俺たちはその後、客間へ通された。いつもの癖で、飲み物を出してくれたおばあさんの左手を見つめた。


...え。糸はどこに.......?

28: 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/12(月) 13:03:29 ID:P2/yVcR/xs
俺には、見えない彼女のお祖母さんの小指の糸。
リボン結びどころか…誰とも繋がっているようには思えなかった。

どういうことなんだろう。
彼女が言う、祖父以外の男と繋がってしまった小指の糸とは…何なのか。

「遠い所からようこそ、この子が男の子を連れてくるなんて珍しいからビックリしたんですよ」

簡単な挨拶を交わしながらも、穏やかに笑うお祖母さんの様子からは、養女として引き取った娘に金の無心をするような人には見えなかったのだが…。
やはり、叔父絡みという事が大きいのだろうか。
お祖母さん自身が金に汚いのではなく、まだ会ったことのない叔父と言う存在が…何か。

そこまで考えたところで、
彼女に連れられて縁側まで赴く。
縁側、といったものの物凄く広い綺麗な庭と面しており普通の田舎の縁側…と思っていたら、大きく違う印象を持つだろう。

「……叔父さんに、お金が必要だからお母さんに頼んでいたんだよね」

「そうでしょうね、あの……クソ男が」

ギリッと憎々しげに唇をかみしめた彼女の横顔は普段の可憐さを塗り潰すほどに憎悪に彩られている。
何と声を掛ければいいのか分からなかったが、彼女の言っていた事故の時の話を思い出した。

叔父が、事故の一部始終を見ていた。
何故だろう。何故、見ていたのかが引っかかった。

酷い話だが、少し考えれば、事故を図ったのは叔父だ。
そしてそれは、義姉が亡くなった時に入る保険金を奪う目的から…でも、それだけじゃ無いような気がして仕方がなかったんだ。
車から必死に抜け出した彼女、その様子を見ていた…叔父。

「……貴女が、いたから…」

「……え…」

「叔父さんの目的は、お金だけじゃなくて貴女だったんじゃ────」

言い終わる前に、背後の襖が大きく開かれた。
29: 龍 ◆RYU....FU.:2012/3/13(火) 19:35:13 ID:1lvOPQUkic
すみません。
読みにくくなると思ったので本文と違うレスで書かせて下さい。

>>28
の部分で間違い部分をスルーして下さい。
わかりやすいように灰色にして取消線をいれました。

>>26で父方の祖母に会いに行ってる設定で、金の無心などの会話も母方の両親の設定に今までの読んだらなってました!
この文章だと逆になってましたので。

これから本文書きます!
30: 龍 ◆RYU....FU.:2012/3/13(火) 20:02:29 ID:1lvOPQUkic
背後の襖が大きく開かれ、振り返ってみると一人の男性が見下ろしていた。
おそらく叔父だろう。
それは彼女の反応を見て気づいた。
彼女は襖が開いた瞬間にチラリと見たらすぐに視線を戻し挨拶もせずに黙っていた。

俺「あ、おじゃましています。」

叔父らしき人物は俺の挨拶を無視し彼女を数秒見下ろし襖を閉めズカズカとした音と共にどこかへ行ったようだ。

祖母の糸が俺には見えない。
何故、父方の祖母の家に母方の叔父が一緒に住んでいるのか。
叔父の目的が彼女だったのではと思った理由を今言ってみるべきか。
叔父からも出来れば話を聞いてみたいとこだ。

疑問が色々あるが、さてどうするか。
82.67 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字