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チーム:ハリュー【出会い】
[8] -25 -50 

1:🎏 名無しですが何か?:2012/3/4(日) 10:56:44 ID:1lvOPQUkic
お題【出会い】

下記の順番でお願いします。

◆WfagbE5V86
ゆこ ◆Ryuko..Wy.
繭 ◆TFyL7CT/Mk
龍 ◆RYU....FU.
すに ◆cjb8xYwtrY

>>1-10 >>11-20 >>21-30 >>31-40 >>41-50


41:🎏 すに ◆cjb8xYwtrY:2012/3/21(水) 05:24:59 ID:RlHSxMP/3U
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
誰も居ない電車の中で、俺と彼女が向かい合って座っている。
窓の外は延々と続く田園風景。いい天気だ。こんな日は日向ぼっこでもしたい気分。今も彼女が座っている方の席から暖かい日差しが差し込んできて、とても気持ちがいい。
そういえばいつも会社に行くときに利用している種類の列車だ。でも行き先を表示するはずの電子版には何も流れてこない。
あれ?壊れているのかな?
車内アナウンスも聞こえてはこないし、一体俺達はどこに向かおうとしているのだろう。

「あなたが悪いのよ…」

突然彼女が話し掛けてきた。

一体なんのことだ?俺が君に何かしたのか?

「家に戻って来たりなんかするから…こうするしかなかったの…」

あれは君のお祖母さんが気になったから話を聞こうと思ってさ。

「私を許して…」

なんで泣いてるんだよ。君が何をしたっていうんだ。俺が君を恨むようなことがあったか?ないだろ?

「お願い私を許して…っ」

泣きじゃくりながら許しを請う彼女。心配ないよ。何があったか知らないけれど、きっと俺は君を許すよ。そうに決まってる。君はやっと見つけた従妹なんだ。

彼女を抱き締めようと立ち上がろうとしたそのとき、もともと逆光で見え辛かった彼女の輪郭がだんだん小さくなっていって、しまいには辺り一面眩しい光に包まれた。俺は目を開けていられなくなってぎゅっと瞼を閉じた。

目を開けると、真っ白な天井だった。

「誠…?」

母さん…?ぼんやりする頭でそう思った。

「兄貴!?」

弟が驚いた声で聞いてくる。大声出すなよ。頭に響くんだよ。

「看護師さん!!息子が目を覚ましました!!早く!!早く来て下さい!!」

母さんうるさいよ。もう少し静かにしてくれよ。

そう言おうとしたけれど、俺の口からは『あ…あ…』という掠れた声しか出て来なかった。
暫くすると白衣を着た中年の男が入ってきて、目にライトを当てたり脈を計ったりしてきた。何か話してと言われたがやはり声が出ない。

「もう大丈夫です。刺されたところが脇腹で不幸中の幸いでしたね。三週間程入院して問題無ければ退院出来ますよ。声が出ないのも一時的なショックでしょう」

「…ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

母が首が折れるんじゃないかという勢いで頭を下げた。隣には、同じように頭を下げる父がいた。
42:🎏 ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/21(水) 22:45:26 ID:1lvOPQUkic


あれからどれくらいの時間が経過しただろう。
海の側の別荘で、波音に耳を傾けながら暖炉の火を眺める。もうすぐ春が来る。暖炉の薪は用意してある分だけで足りるだろう。

糸が見える仲間・・・誠と言ったっけ。彼は命に別状はないと聞いた。
お見舞いくらい行きたいけど、どんな顔で会えばいいのだろうか。いやむしろ会ってもらえるのだろうか。


あの日、家の付近を警備していたガードマンに発見され、警察の前に父方の叔父に連絡がいった。
クソ叔父も一命は取り留めてしまった。リハビリしてもいくらか障害は残るだろうとのことだったが。
まぁ平たく言えば叔父さんがすべてお金で解決してくれた。
叔父さんも大規模企業のトップである以上、母・・私の祖母の傷害事件など明るみにするわけにはいかなかったのだろう。
祖母は私が誠を刺した罪すら被り、そして父方の叔父は大事にならないようありとあらゆる手をつくしてくれた。

クソ叔父は少し前から私に養子にくるようにと言っていた。
運命の相手が見える赤い糸、そして死を司る青い糸が見える私を利用して、新たな金儲けをしようとしていたようだった。
書類の上だけとはいえ、あんな男の娘になるのは死ぬほどイヤだった。


だけど、今回の事件で全てが暴露された。

あの事故のとき、車から脱出した私は、両親と叔父とが青い糸で繋がっているのを見た。
青い糸の意味を理解すると同時に、叔父が両親を死に至らしめたことに気づく。幾ばくかの保険金のために。

祖父が亡くなるのと同時に、叔父は数枚の写真をネタにして祖母を強請り始めた。
いや、本当は私の両親のこともその写真で強請っていたらしいのだけど。
その写真というのが、私の母の・・・裸体。

クソッタレは、父との結婚が決まった幸せ絶頂の母を無理矢理・・・。
以降、その写真を元に両親を、そして祖母を強請り続けた。両親も祖母も、会社のために、そして私のためにクソッタレの言うなりになっていた。

今回、クソッタレがあのような状態になっても黙っているのは、叔父さんからの多額の慰謝料と、今までのその強請りの事実があるからだそうだ。

そして私は、、、あのクソッタレの娘だった。両親も祖母も、その事実をひたすら隠すために命を失い、罪を背負った。。。



パキン...ッ

自分で自分を殺めてしまいたい衝動にかられたところで、薪の爆ぜる音に我に返る。

従兄弟、誠は元気だろうか。彼にはたくさんの隠し事をしてしまったし、それ故にこんな薄汚い事件に巻き込んでしまった。
私を助けようと、力になりたいと言ってくれたのに、私は彼を刺してしまった。。。もう、二度と会うことはないだろう。
まさか従兄弟だったなんて。。


ぴんぽーん

フフと自嘲気味に笑みを漏らしたところで、インターホンがなった。
43:🎏 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/21(水) 23:52:32 ID:P2/yVcR/xs

「はい」

「よっ、久しぶり」

「は…?」


きょとんとした声が返ってきたものの、良い別荘だなーとか外装を眺めている間もなくすぐに玄関の扉が開く。
出てきたのは少し疲れたような表情はしているものの、元気そうな従姉妹の姿。

「ちょ、ちょっと貴方……どうしてココ……。それよりも、まだ退院したばかりのはずでしょう!」

「いや、まあ……そうなんだけども」

軽く笑いながら答えると怪我人の癖に何をやっているのか!と凄い剣幕で怒られる。
どうやら本気で俺の身を案じてくれているらしく、先ほどから病院に戻れ戻れとしつこく言っては睨みを利かせてくる。
でも、無理やり追い出したりするようなことはせず、中に上げてくれた上にお茶までちゃっかり用意して貰ってしまっていたりする。
悪いな、というと怪我人なんだから…とブツブツ言われる。

まさか、あのバス停で彼女を目にしたときには従姉妹だなんて思わなかったし顔だって俺の知る限りでは親戚の中でとびっきりの美人だ。
口汚く罵られたり、小馬鹿にされることの方がとにかく多かったように感じるけど、彼女の優しい笑顔が見れた時は嬉しかったものだ。
彼女が俺にしたことを咎める気はない。
そりゃ、痛かったけどな。命に別条はないとは言っても、一応刺されたわけだし。

でも、何よりも一番精神的ダメージが強かっただろう彼女が元気で生きていてくれることが嬉しい。
俺には、彼女に青い糸が繋がってしまったとしてもそれを見ることが出来ないから。
こうして直接彼女の安否を確かめる以外にない。
自分を責めて彼女にまでもしものことがあったら…と考えるだけで、寒気がするのだから。


「麻衣、って…呼んでいいんだよな」

「それは…好きに呼んだらいいと思う、けど」

「じゃあ麻衣。あのさ」

「……何ですか?」

ツン、とした態度でいるものの名前を呼んだ時の彼女の顔は少しきょとんとしていて俺に呼ばれることに慣れてないんだなぁと思うと少し笑ってしまう。
もちろん、彼女の前で笑おうものならキッと目を吊り上げて睨むので表だって笑ったりはしないのだが。

「俺のことをこうして出迎えてくれたからこそ、一つ言いたいことがあって来たんだ」

「……何を?」

「一緒に、暮らさないか?」

44:🎏 龍 ◆RYU....FU.:2012/3/22(木) 00:36:36 ID:1lvOPQUkic
麻衣「えっ…いあ、でも…私、貴男の事刺し…」

俺「あー、まぁ、えと、とりあえず俺も部外者じゃないし叔父の事とか出来れば話してくれないか?」

麻衣「……」

麻衣「そうですね。私にも話す責任がありますよね。」


………

……




そして麻衣は全てを語ってくれた。

叔父にされた事……。
弱みを握っていた事……。
家族が何故、叔父にお金を渡していたのか……。

俺は飲み込む唾の音を隠したく、ふうっとお茶を一口唾と一緒に飲み込んだ。
聞いてはいけなかった様な、言いたくない事だが俺を刺した罪悪感を理由に無理やり聞き出したようで、なんて言っていいかわからなかった。

俺「そうか……。思い出したくない事を聞いてしまって悪かったな。」

麻衣「……」

余計に空気を悪くしてしまったようだ。
言葉が詰まった時の為に映画を持ってきたので、まずは雰囲気を変えてみるか。

俺「あ、ビデオ持ってきたんだ。話は後にして一緒に見ないか?」

麻衣「……うん。」

彼女もこの雰囲気の空気に戸惑っていたようなので、すんなりと承諾してくれた。
ビデオを見て空気を変えて、今後について話し合おう。
そう思い一緒にビデオを見た。



http://llike-2ch.sakura.ne.jp/ss/images/aa.gif



麻衣「なに…こ…れ…」


俺「アッー!!間違えたぁぁぁぁああああああああ」
45:🎏 ◆WfagbE5V86:2012/3/22(木) 23:19:17 ID:4Cv9sk.XOo

俺「くぁwsでfrtghyじゅきぉp;@:」

麻衣「・・・まあ趣味は人それぞれですからね・・・」

完璧に勘違いされてる!違う!これはホモの友達に妙に期待した顔で無理やり渡されたんだ!これ見たぐらいじゃ目覚めねぇから!

俺「ゴメン、本当にゴメン」

麻衣「とにかく早く映画みましょう」

目が死んでいた。麻衣の後ろにスタンドらしきものが見えた気がした。

俺「あ、こっちにしよう」

なんもかいてないDVDをてにとる。家から適当にもってきたやつだから心配だ・・・。

うぃぃんと起動音が部屋中に響く。
何故か正座する。手汗が半端ないのだが・・・。

映像がついた。トトロだった。

麻衣「・・・・・」

俺「(ふざけんなおれええええええええええええええええええ!!!!)」

麻衣「まあトトロいいですよね」

そしてトトロを見始めて少し、メイが小トトロを追いかけた当たりで麻衣が急に話し始めた。

麻衣「・・・私も昔はこんな子だった」
46:🎏 ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/23(金) 00:22:36 ID:1lvOPQUkic
彼女の目はメイを通して過去の自分を見ていた。

麻衣「父のことも母のことも大好きで、泣き虫で、でも好奇心が旺盛で。今となってはこの素直さに憧れちゃうなー。」
俺「何も変わってないよ。むしろ、もっとメイっぽくなったんじゃないかな。他人に見えないものが見えるんだから」

びっくりしたように俺を見て、そしてクスリと笑う。

麻衣「じゃあ、あなたもメイなんですね」

言い終わるころには堪えきれずに腹を抱えて笑っていた。
なにが面白いのか俺にはわからないが、あの事件以来どうせ一人で全部抱え込んで、笑うことも忘れていたのだろう。だから歯止めがきかなくなってるんだ。

俺「あのさ、俺の母が君に会いたがってるんだ。『妹の忘れ形見』って」

笑い過ぎて流した涙を指で拭う彼女に、母から聞いた話をそのまま伝えた。
麻衣のお母さんであり、俺の母の妹である女性は、子供のころから糸が見えていたと。施設でのこと、ずっと案じていたこと、麻衣のことも娘のように思うと言っていたこと。。。


麻衣「そう・・・」

そう呟いて暖炉に目をやる。俺もつられて同じ方向へ視線をやるとパチパチと爆ぜる薪が心を落ちつかせてくれた。

俺「だから、一緒にry
麻衣「私は、その前にやらなくちゃいけないことがあるの。」

俺「やらなくちゃいけないこと?」
麻衣「彼・・・元彼ね。彼の安否を確認しなくちゃいけない。」
俺「やっぱり彼の指の糸は青だった・・・?」
麻衣「ええ。彼の先輩にあたる女性で、彼が常々『尊敬している』と言っていた人とね、つながっていたの」

麻衣「そんなこと言えないでしょう?あの女性があなたの死に関わっているなんて」
俺「・・・」

麻衣「ま、逃げただけなんだけどね。その女性から彼を守ればよかったのにそれも出来ずに。悲劇のヒロインを気取って、彼の死から逃げた」
俺「青い糸が見えて、麻衣はその運命を覆すことができると思う?そして、逆に彼がその女性の死に関わっているという可能性を考えたことは?」


大きな溜め息をつきながら一瞬天井を仰ぎ見て、そして真っ直ぐ俺に向き直る麻衣。
その目の中に信頼の色を見たのは初めてだった。

麻衣「ひとつめの質問の答えは、今のところノー。やり方によってはできるかもしれないけど、名案は浮かばない」


運命は運命、か-------------。

麻衣「二つめの質問は、イエス。だからこそ、運命を変えてみたい。彼を犯罪者にしたくない」
俺「俺も行くけど、いいよね?」

麻衣は無言で一枚のメモを差し出した。
どうやら、住所が書かれているようだった。
47:🎏 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/23(金) 02:02:25 ID:mGQ5RRjDh2

俺「ここ、か…」

麻衣「ええ」

麻衣が頷いたのを確認して車から降りる。
道中、車の運転なんて出来たんですねと意外そうに言われてしまい少し悲しいものがあるが気にせずに車を走らせていた。
通勤に使っていないだけで乗れるんだとアピールしたら変なの、と笑ってくれたが車を降りてからの彼女の表情は真剣そのものだったのだが。

麻衣「……インターフォン、押しますね」

俺「ああ」

背を向けたままの麻衣に向けて短く返事をすると、ゆっくりと深呼吸を1つしてからインターフォンを押す。
ぴんぽーん、という安っぽいインターフォンのが鳴ったものの返事の返って来ないインターフォンを見つめていればチェーンを付けたまま音を立てて軽く玄関の扉が開く。
顔を少し出したのは暗い表情こそしているが、違いなくイケメンだった。
ちくしょう美男美女カップルだったのかと地団駄を踏みたいところだが、元彼氏のイケメンが麻衣の姿を確認すると目を大きく見開けばすぐにチェーンを外し大きく扉を開いてその姿を確認している。

「ま、麻衣…!?」

麻衣「修介…久しぶりね」

元彼氏は修介というらしい、俺のことなんて眼中にないらしく今にも抱きしめんばかりに麻衣のことを愛しいそうに見つめている。
念のために小指を確認するが、赤い糸が遠くに伸びているだけで麻衣と繋がっている様子はないし青い糸も見えなかった。

修介「? 麻衣、そっちの人は…」

麻衣「私の従兄弟のお兄さんよ」

俺「……ドウモ」

イケメン爆発しろと念じながらも軽く挨拶をすると、軽く会釈を返してくれた。悪いやつではないように見えるが、先輩の女性とやらの死に関わっているだろうという彼は誰かを殺したりするようには見えない。

修介「なんだか、ヨリを戻しに来てくれたわけじゃないみたいだね…」

麻衣「…突然、押し掛けてしまって悪いけど」

修介「……ううん、良いんだ」

麻衣「あなたにどうしても言いたいたいことがあって」

首を傾げる修介をまっすぐ見つめながら麻衣は口を開いた。

麻衣「単刀直入に言うわ。…先輩を殺したりしないで」

修介「は…? 先輩、って…」

麻衣「修介の先輩。…あなたが尊敬してるって言っていた人」

自分の尊敬してる先輩、と言われては思い当たった人物がいたからだろうか修介はあからさまに顔色を変えて動揺していた。

48:🎏 すに ◆cjb8xYwtrY:2012/3/23(金) 18:12:16 ID:n59Waca3nY


修介「な…に言ってんだよ…俺が先輩を殺すはずないじゃん!尊敬してるんだし?殺す理由なんてある訳ないだろ?」

はは…冗談キツいよ…と続ける彼の瞳は私を見てはいなくて、明後日の方を向いていた。隣に立っている誠さんも、私のいきなりの発言に驚いた様子だ。

修介「それよりさ、やっぱり俺お前が好きなんだ。また付き合ってくれないか?」
修介「俺あれから何人もの女と付き合ったけどさ、お前以上のやつなんて一人も居なかったよ」
私「修介」
修介「だから頼むよ。なあ?麻衣もほんとはそれ言いに来たんだろ?その人だって俺以外の奴に声掛けられないためのカモフラージュ…」
私「修介!」

ハッとして、彼は一旦喋るのをやめた。

修介「ごめん…」

私は彼の手を取ると言った。

私「その話はまた後でにしましょう?ね?」
修介「…わかった。じゃあ、取り敢えず上がって」

私達は彼の住むマンションへお邪魔することになった。

修介「散らかっててごめんな」

リビングに通されると彼が言った。そうはいうけれど、いつ客を呼んでも申し分ないほど部屋は片付いていた。几帳面な彼なりに気になるところがまだまだあるのだろう。
お茶を用意してくれた彼も席に着くと、私は早速話を切り出した。

私「さっきも言ったけど、もしあなたが先輩を殺す気なら、やめて欲しいの」
修介「…」
私「いきなりなんのことかわからないかもしれないけれど、冗談で言っているとかじゃないのよ。本気なの」

彼は黙り続けている。それを見て私は早まってしまったのか、と感じた。確かな証拠も無いのにいきなりこんなことを言って、不審に思われたに違いない。けれど、それ以外に方法が思い付かなかった。
すると彼が喋り始めた。

修介「…なんで、麻衣がそんなこと言うのか分からないけど、俺、確かにあいつを、先輩を殺したいと思った」

いざ彼の口からそう言われると、ショックだ。返す言葉が見当たらない。

修介「麻衣と別れた後さ、引きずって立ち直れなかった俺を慰めてくれたんだ。馬鹿な俺はそれだけでクラッときちまって、自然と俺達は付き合うようになった」

初めて聞く事実に驚きが隠せなかった。

修介「ある日酔ったあいつが言うんだよ」

先輩『あんたの元カノって馬鹿だよね〜。こ〜んな良い男と別れるなんてっ!ちょっと修介が私に気があるから別れろって脅したくらいでさあ』

修介「気付いたら俺はあいつを殴ってた」
49:🎏 ゆこ ◆Ryuko..Wy.:2012/3/23(金) 22:09:55 ID:1lvOPQUkic


修介「まぁ瞬間的な殺意ってやつ?今でも許せないけどさ、女殴った瞬間目が覚めたっていうか」

人は何かを隠そうとするとき饒舌になると言うものだ。この男もまさにそんな感じだった。
普段この男がどれくらいよく喋る奴なのかわからないから言い切ることはできないが、俺はそんなふうに思った。


修介「ry というわけで、この話は終わり!な!」

麻衣「えっと・・・私は先輩から脅されたことはないし、酔っぱらってたとはいえ、ありもしない、しかも自分の印象を悪くするようなことを言うなんて考えにくいのだけど」

修介の顔色がまた変わる。赤くなったり青くなったり。目も白黒させてい忙しい奴だ。
空気と化した俺はとりあえず洒落たグラスに注がれた烏龍茶をひたすら飲んでおく。

修介「あーもーうっせーな。いい加減にしてくれよ!久しぶりに顔見せたと思ったらなんなんだよ!」

麻衣「私達がまだ付き合ってるときから、貴方と先輩はお付き合いしていたようだけど・・・」


修介「・・・あ、おかわり入れるわ」


修介は俺の空のグラスを見て、逃げるようにキッチンへ去って行った。


麻衣「青い糸が、ないの」
とても小さな声で、でもはっきりと麻衣は言った。
俺「え?じゃ、じゃぁ」

麻衣「でも、おかしいのよ。何か変なの。貴方だってそう思うでしょ?あの様子はおかしいと思わない?」

俺「正常な状態の彼を知らない俺にはなんとも」


麻衣が軽く唇を噛んだところで、キッチンから声が聞こえてくる。

修介「麻衣は昔っから勘がするどかったよなー。
修介「お前が事故ったときさ、実は、お前の叔父さん?だっけ?あのオッサンから『麻衣の帰宅時間と帰宅ルート教えろ』って言われてさ
修介「まぁ金もらったし、何時に帰るか言うくらいいいかと思って。したら事故だもんなー。
修介「事故のあと、お前ちょっと様子おかしかったし、一瞬面倒かなーとか思って。先輩と遊んでたんだよね。

ずっと修介のターン。
不愉快な話をし続けながらキッチンから出てくる不愉快な男。
俺のお茶持ってねーじゃねーかボケ。

修介「お前と別れてしばらくしたら、アイツ『子供できちゃった』とか言うわけ。ほんと最悪だと思った」


後ろ手に何かを持っている。なにこの空気。火曜サスペンス劇場とかで見たことあるかも、この感じ。
50:🎏 繭 ◆TFyL7CT/Mk:2012/3/24(土) 00:12:51 ID:P2/yVcR/xs

「上手く行きそうだったのにな……なんで、勘付いて来ちゃうか、ホント」

修介の表情が暗い。
正面にいる麻衣からは腰を押さえてるくらいにしか見えてないかもしれないが、俺の角度からは何かが握られているのを認識できた。

「せっかく、先輩階段から落として清々してたってのに」

「……え?」

「これで気にすることないって、思ってたのに」

その言葉で気づいた。
修介と先輩とやらが繋がっていた青い糸が消えた理由。
嫌な予感って本当に勘弁してほしいな、勘が良いっていうのは麻衣も俺も一緒なのかもしれない。

「逃げるぞ!」

「え、ええ!?」

追いかけてきそうな修介に置いてあった何かのリモコンを投げつけ、テーブルを修介の方に向けて蹴り上げる。
驚いた表情の麻衣の手を引いて玄関まで急いだ。もちろん、いきなり物を投げつけられた上にテーブルがひっくり返って焦っているのだろう、ちゃんと靴を履く余裕くらいは作れた。

「何、まだ先輩についてちゃんと…!」

「麻衣が見た青い糸は先輩と繋がったんじゃない、先輩のお腹の中にいた子供と繋がったんだ!」

「じゃ、じゃあ青い糸が消えたのは…」

「修介が階段から落としたって言ってただろ、多分その時に…」

「誰も死なないように、説得に来たのに…!」

「そんなこと言ってる場合か!」

路駐はマナーが悪いが、それでも車を近場に止めていてよかったと思う。修介が持っているのは包丁だ、刺されたら溜まったもんじゃない!
走ったことで傷口がまだ若干痛むが、構っていたら傷口がもう一つ出来てしまいかねない。このまま車で逃げて警察に行った方が……

「うわっ!?」

「ちょ、ちょっと誠さん!」

俺も本気で走っていたからか、思わず転倒する。もちろん一緒に麻衣もバランスを崩したが、さすがに俺ほど派手にこけることは無かった。が、情けない限りだ。もしこれで足を挫いていたりしたらとんでもない。
麻衣が俺の方に駆け寄ってくると、すぐに後ろに修介の影が見えた。逃げるな、と喚いているらしい。
麻衣に怪我をさせたら天国にいるだろう、叔母さん達に申し訳ない。ポケットに手を突っ込んで車のキーを渡す。

「麻衣、先に車に入ってろ。それから、急いで携帯で警察呼べ!」

「あなた怪我人でしょう!?何馬鹿なこと…!」

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